高橋文哉が語る「“周りの評価”との向き合い方」 芝居で心がけていること、先輩俳優からの刺激
■悔しい思いがいい経験に ――本作からの学びはありましたか? 非常に秀逸なトリックのある物語ですが、そのために、会話の演出やカメラワークをあえてダサく撮っていて。監督はそこにすごくこだわっていました。そういう撮影を間近でさせていただいたのは初めての経験だったので、いろいろなお話をしたことも含めて、とても勉強になりました。 ――共演には個性的な俳優の方々が並びました。 これまで同年代や年下の方との共演が多かったのですが、ここ2年ほどでガラッと変わっています。本作でも上の世代の方々とご一緒させていただいて、みなさんの芝居の厚みを知りました。たくさん悔しい思いもしましたが、それがいい経験になりました。
――悔しい思いとは、どんなことですか? それは内緒です(笑)。本作に限らず、いろいろな作品でけっこうあるんです。先輩方の芝居を見て、台本に対する自分の解釈との違いを痛感したり、その芝居ってどうしたら思いつくんだろうと思わされたり。みなさんの“当たり前”という固定観念を捨てることの能力の高さが身に沁みました。 ――本作は、サスペンスでありながら、ホラー的な要素や、コメディタッチの笑いのエッセンスがあり、時代を映す社会性も内包しています。この作品がいまの社会に伝えることをどう考えますか?
僕らの世代も含めて当事者たちにはそれぞれ自分の考えがあり、やるべきことを見つけてようとしている。特に若い世代はそうは見られないこともあるのかもしれませんが、いまが時代の変わり目であって、世代によって見え方が違ってくる。そんななかで、そこにちゃんと順応していきながら、生きている、ということでしょうか。 本作の主人公のように、コロナ禍で人生が変わって屈辱的な思いをしている人もいるかもしれない。それでも人の役に立ちたいと社会に向き合う。いまの生活や仕事に満足していなくても、やらなくてはいけないことはあるし、やっても納得がいかないこともたくさんある。それでも、生きているなかで幸せを見つける能力は誰にでもあるものなので、諦めてほしくない。僕はそういうことを伝えていると思います。