「わたしに死ねと?」家賃6.5万円の部屋の明け渡し訴訟を起こされた73歳・女性。司法書士「高齢者は本当に部屋を貸してもらえません」
◆「他の部屋を借りられないし……」 訴訟の手続きに入ると、ミズエさんは「わたしに死ねと言うのですか?」と連絡をしてきました。 もちろんそんなことは、一言も言っていません。でも「契約を解除したので、退去してください」と書かれた訴状を読んで、ミズエさんは「もう生きてはいけない」と思ったのかもしれません。 長年住み続けてきたのですから……。そう言いますが、賃貸物件の場合、家賃を払わない人に部屋を貸し続けることはできないのです。 家主だって、ビジネスで賃貸経営をしているのですから、家賃を払ってもらえないなら、退去してもらってきちんと払ってくれる人に借りてもらいたい、そう考えるのは当然のことです。 ミズエさんは、法廷では、急に弱気になって「他の部屋を借りられないし……」と言い出しました。裁判官も同情的にはなりますが、払えない以上仕方がありません。 たまたまミズエさんの住んでいるエリアは、低所得の方々への居住支援を手厚く行っている地域でした。そういうエリアは、明け渡しの判決書を持って行政の窓口へ相談に行くと、緊急性があるということで担当者も頑張ってくれることが多いのです。 ミズエさんにもその旨をしっかりお伝えして、窓口へ行ってもらいました。結果として、空いている公営住宅に入居することができました。
◆長期的な人生設計を 民間の賃貸物件は、今現在、高齢者になると本当に部屋を貸してもらえません。この先は日本の人口がどんどん減り、高齢者が増えてくるので状況も変わるかもしれませんが、劇的に変化するとは私には思えません。 だから目先のことだけでなく、この家賃を自分は死ぬまで払い続けることができるのか、ということを考えて欲しいのです。 働いている間は払えても、いつか体力的にも働けなくなる時がきます。賃金だって下がることはあっても、高齢者になって上がることは、普通はほとんどないと思います。 長期的に人生設計をすることは、本当に重要なことだと思っています。 先日も50歳前後の夫婦が、家賃を滞納しているということで家主からご相談を受けました。二人の収入内で生活ができず、消費者金融からもお金を借りていました。 連帯保証人になっている80歳近いお父さんが代わりに払ってこられましたが、「もう援助を続けるのは無理だ……」となり、訴訟手続きになったのです。 50歳前後の夫婦が家賃を50万円も滞納しているということは、貯金を隠しもっていたら話は別ですが、基本はお金がないということ。この年代で貯金がないというのは、本当に将来が厳しいことでしょう。
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