「現場を歩け」を実践。村尾和俊NTT西日本社長が講演/大阪
関西経済同友会代表幹事を務める村尾和俊NTT西日本社長が9日、大阪市北区の大阪第一ホテルで開かれたNPO法人SKC企業振興連盟協議会主催の第395回早朝講演会で「出会いが人生を変える」と題して講演し、恩師から学んだ経営哲学を披露。経営管理者層に、「的確な方向付けをするために現場を歩き回ろう」などと呼びかけた。 村尾さんは1952年兵庫県生まれ。76年、京都大学法学部卒業後、日本電信電話公社(現NTT)に入社。2012年NTT西日本社長に就任し、今年から関西経済同友会代表幹事を務めている。「若いころの夢は課長補佐」と振り返るほど、のんびりタイプだったが、働き盛りを迎え、「社内でもっとも怖い人物」と恐れられた恩師との出会いが、人生を変えた。
事前の連絡なしに営業拠点へ足を運ぶ
恩師は民営化直後、関西地区の総責任者として着任。公社時代のぬるま湯体質からの脱却を図るため、大ナタをふるった。 「部長や支店長は1カ月間出社に及ばず」「幹部会議は不要」「若手中心のヤング支店創設」――などの改革を矢継ぎ早に断行。村尾さんは恩師の経営哲学を職場へ伝える『通訳』としてつねに随行し、恩師の改革を最前線で体験した。 やがて、村尾さん自身が支店長の要職に抜てきされた際、恩師直伝の経営手法を、実践に移すことを決意。たとえば「的確な方向性をつかむために、現場を歩き回り、仕事をのぞきこむ」という現場徹底主義だ。 「私も恩師にならい、事前の連絡なしにさまざまな営業拠点に出向いた。最初はけむたがられたが、そのうち『こんな問題で困っている。何とかならないか』という生の声を聞けるようになった」(村尾さん)
組織の士気を高めることを楽しむ
現場で集めた情報をもとに、明確なベクトルを示すのが、リーダーの使命だ。 「ベクトルを決めたら、プロセスは部下にまかせる。プロセスにまで注文を付けていると時間がかかりすぎる。そして、結果責任はトップが取る。成果が上がらなくても、部下のせいにはしない」(村尾さん) 一方、トップが統率しているつもりで、いつのまにか周囲のイエスマンたちに取り込まれてしまう事態が、発生しないとも限らない。 「おみこしとしてまつりあげられないよう、自立した行動を取るのも、すぐれた経営者の条件と、恩師から教わりました」(村尾さん) やはり経営は気の抜けない場面の連続だが、「組織の士気を高めることを楽しむ」も、恩師から受け継いだ経営哲学にある。経営道を追求した最高の境地かもしれない。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)