「東京まで25分」の山梨リニア新駅に直結、5合目結ぶ「富士トラム」新構想--鉄軌道断念のワケ
山梨県は、これまで議論を続けてきたLRTを使った「富士山登山鉄道構想」における鉄軌道の使用を断念した。代替案として、ゴムタイヤ式の新交通システム「富士トラム」(仮称)の構想を発表した。 【画像】鉄レールを使わない利点とは 富士トラム構想とは 富士トラムは、東京まで25分の山梨リニア新駅に直結し、富士山5合目に至る構想だ。単なる富士山への輸送に留まらず、沿線の鳴沢村から山中湖村に広がる6市町村の沿線から、山梨リニア新駅へのアクセス路線としての性質も兼ねる。 レール不要、一般道を走れるためコスト大幅削減 車両は地産の水素で駆動する新交通システムで、ゴムタイヤで一般道を走れる。構想では主に富士スバルラインを走行する。 また、磁気マーカーや白線で誘導し、軌道法の適用対象とする。同法に基づいて富士スバルラインへの一般車両の進入も規制する。レールや架線が不要なため大規模な工事が不要で、大幅なコストダウンを実現できるという。 鉄軌道断念のワケ 山梨県は2021年2月に「富士登山鉄道」構想を発表。その中身は、富士スバルラインに「鉄軌道」を敷設し、LRT(路面電車)を運行させる内容だ。 一方、同構想には反対意見が相次いだ。富士スバルラインへの鉄軌道敷設には大規模工事が必要で、環境破壊が避けられないこと。さらに、そもそもの建設費に加え、近年頻発する大規模災害時には、復旧費用が過大になるという指摘だ。 そこで富士トラム案では、中国の鉄道車両メーカー「中国中車」が発表しているゴムタイヤ式新交通システムのコンセプトを採用した。 ARTは、道路の磁気マーカーや白線に沿って運行するためレールの敷設が不要。かつ一般道を走れるため建設コストを抑えられる。また、水素駆動のため架線もいらない。すでにマレーシアで実証実験が始まっている。