【全日本フィギュア】山本草太、オリンピックに向けて「夢への飛行」 日本男子は群雄割拠「1mmでも上にはい上がる」
フリーに込めた「夢への飛行」
今シーズンは「洗練」をテーマに掲げ、技術だけでなく、表現力にも磨きをかけてきた。ショートプログラム(SP)はブノワ・リショー氏と、フリーはローリー・ニコル氏と、ともに世界的な振付師と初タッグを組んだ。 SPの曲は「Split, Postcards from Far Away」。孤独と友情と人間性を題材にしたプログラムだ。「ブノワさんが、『人々は孤独のようだけど、誰も一人ではなくて、みんなそれぞれつながっている』と話してくれて。そういったところを感じながら自分の気持ちをプログラムに落としていけたらなと思っています」 前半はピアノの音が静かに響き、孤独を感じさせる。後半に入るとガラッと曲調が変わり、そのコントラストが見どころだ。「ステップはもどかしさや葛藤、自分の感情全てをぶつけられるようなパートになっています。手で口をおさえ、その手をふっとどこかに持っていくような振り付けがあるんですが、誰かを追いかけているような、孤独ともとれるし、誰かとつながっているともとれます。変わった振り付けだと思うので見てほしいです」 フリーは2曲による編曲で、前半は「Melting(メルティング)」というロマンチックな音楽。指先まで柔らかく表現するように心がけているという。 後半は「The Dream of Flight(ザ・ドリーム・オブ・フライト)」という曲で、「夢への飛行」という壮大なイメージを表現している。ダイナミックな4回転トーループがプログラムのアクセントになっている。 山本にとっての「夢への飛行」。それはオリンピックにほかならない。 正確に言えば、夢ではなく「目標」だ。 「ずっとオリンピックは目標にしていたんですけど、今までのオリンピックシーズンはそのレベルに到達していないまま迎えていて、目標というよりは夢の方が近かったと思います。今は目標としてオリンピックを捉えられています。まだまだ、もっと成長できると思っているので、1つの目標として全力で日々頑張るだけかなと思っています」 日本男子は、宇野さんが引退しても鍵山を筆頭に群雄割拠で代表争いは熾烈(しれつ)だ。 「日本選手のレベルは高いんですけど、食らいついていけたらと思いますし、“番狂わせ”じゃないですけど、『やるやん』って思ってもらえるような演技ができたらな、と思っています。オリンピックに向けてまずは今シーズンの全日本で、『まだやれるぞ』というところを見せたいです」 自分の限界は決めない。目標実現に向けて日々成長し、進み続ける。 山本ならきっとたどり着くはずだ。そう信じている。
浅野有美