元BCG代表・堀紘一氏が、元ホンダ副社長から教えられた「本当のコンサルティング」とは?
■ コンサルの言うことを受け入れる体制ができていない いくらコンサルタントが素晴らしい解決策を提示しても、企業側が受け入れなければ絵に描いた餅で終わる。 コンサルとしての答案をどうまとめるか? 最終的な結論を提示する大事な瞬間だが、私自身が経験値を積む中で見出した方法がある。 たとえば、課題解決の方法としてベストだと考えた案を「A案」としよう。ただし、これを実行するにはかなりの企業努力が必要になるし、痛みを伴う。 そこで私は、これなら絶対に企業側が受け入れてくれるだろうという安全策の「C案」を作る。改革とはいえないような内容だから、じつに物足りない。そこでA案とC案の中間くらいの「B案」を作る(下図参照) コンサルティングも大詰めに近づくと、私はこのA、B、Cの3案を考えておく。それで本番のプレゼン前に、それとなく担当者に探りを入れる。 すると「堀さん、とてもじゃないがA案は常務会を通らないよ」と言われる。そこで私は仕方なく、「ではB案でどうでしょうか?」と提案する。「確かにA案よりは実現性は高いが、それでも社内を通すのは難しいね」となる。 結局、コンサルタントとしては妥協案であるC案が通る。私から言わせると、こんな程度ならコンサルなど雇う必要はないじゃないかとさえ思う。 ただし驚くなかれ、私の経験上、このC案で落ち着くのが全体の8割から9割なのだ。 若くて理想に燃えたコンサルタントだと、「それではコンサルタントとして納得できません」などと突っ張って、企業側とモメてしまうこともある。だが、ベテランになると、もはやそれも与件として受け入れるようになるのだ。 コンサルタントとしての理想は理想。ただし企業の現実は現実であり、その企業に再度呼んでもらえるコンサルタントが、最終的には生き残っていく。 とはいえ、本来コンサルタントを雇う決断をした企業であれば、もう少しコンサルタントの意見を受け入れる体制を作ってほしいというのも、正直な実感だ。 私の経験上、A案を受け入れてくれた企業は成功している。それが先ほどのホンダであり、ソニーという当時の成長企業である。 安易にコンサルタントに依頼するわりには、いざ真剣にコンサルタントが向き合い、本気の提案をすると、それはできないとビビってしまう。そういう企業がじつは多いのではないかと考えている。その結果、コンサルタントを頼んでも成果が思ったように出ない。 ならば、わざわざコンサルタントを雇う必要などないのに…。昨今のコンサルタントブームと陰で起きているミスマッチの現状に、そんなことをふと考えてしまう。
堀 紘一/津田 久資