元BCG代表・堀紘一氏が、元ホンダ副社長から教えられた「本当のコンサルティング」とは?
■ 昔の企業の方が「考える力」を持っていた その点では、むしろ私たちの若い頃の企業の方が、独自に考える姿勢が強かったように思う。 ただし、これもコンサルタントにとってみれば良し悪しだ。当時、私のような若いコンサルタントが行くと、「お前のような若造に俺たちの会社の何がわかる!」という拒絶や抵抗にあうことが当たり前だった。 たとえばホンダのコンサルを担当したとき、当時の副社長である入交昭一郎さんと夜中の12時過ぎまで白熱した議論になった。 お互いのテンションが上がってしまい、入交さんが「堀さんに機械工学の何がわかる?」と言うから、「はっきり言えば何もわかりません。ただ、そういう入交さんは経営の何がわかるんですか?」と返した。 もはやけんか腰だったけれど、深夜2時を回ったくらいになると、すっかり言いたいことを言い尽くして、今度は大いに意気投合し出した。 「経営がわからない俺と、機械工学がわからない堀さんが、一緒になって議論していくって、たぶん人類の歴史でも初めてなんじゃないか?」と入交さんが言って、一緒に解決策を探っていこうとなったのだ。 お互いに自分の世界があって、それぞれに矜持を持っていたから、ぶつかるときは激しくぶつかる。けれど、それを通り越すと、今度は強い連帯感や絆のようなものが生まれる。 決して私が経営理論を一方的に押しつけたわけでもなければ、向こうが一方的に自分たちのやり方を主張したわけでもない。一緒に同じ方向を向いて解決策を探っていくという共同作業になったのだ。 本当のコンサルティングとはまさにそういうことだということを、私は入交さんと侃々諤々とやり合う中で教えてもらったと考えている。 どうも昨今の企業を見ていると、そこまでコンサルタントと向き合う気概のある人物は少ないように感じる。 それは雇う側の企業の方に、しっかりとした考えがない、自ら考える力が欠如しているということのあらわれでもあると思う。