明石市は、社会を変える希望の原理となった…泉房穂、東大時代の「恩師」と語る
泉房穂氏といえば、前明石市長として大胆な市政改革を行い、今は政治状況への鋭い発信と、政界再編に向けた「仕掛け」で知られる現代のキーパーソン。彼には東大時代に恩師がいた。ラディカルな評論家で社会運動家でもある菅孝行氏だ。40年ぶりに再会を果たした師弟が、現代の政治闘争と社会変革の核心を語り合った──。(構成・倉重篤郎) 【写真】再逮捕された「美人すぎる寝屋川市議」の写真集全カット
議会と役所が「全敵」でもやれる自信があった
菅孝行地方自治について、選挙で勝つ、というだけなら、たとえば1995年に東京都で青島幸男が勝って、都知事になっている。当時は一部のメディアも青島に勝目があるというテレビ報道をして投票誘導に向けて頑張った。ところが勝ったとたん、議会と東京都官僚の壁の前でレームダックでしょう。そこがあなたと違う。青島も役人とも議会とも対決姿勢だったから、周囲は「全敵」で、そこは同じでしたけどね。 泉房穂俗に言う市民派的な野党系の人は、都市部だと首長は通ることもある。通った瞬間、議会で与党は自公だから手打ちするわけです。それで何もしない無能な首長に終わってしまうのがほとんどなんですよ。全敵でもやり方が何種類かあって、大阪の橋下徹さんは、トップを取るだけじゃなくて、議会で過半数を取りますやん。大阪やったら大阪府知事を取ったあとに、大阪府内の市長を取っていく。そして議会も過半数を占める形に10年かけている。維新が強いのは、一定程度それをやってしまったからです。だけど、私の場合は、議会を気にせず、市民の力でやった。 菅市長選で勝った上に、議会も役人も役人の労働組合も向こうに回して政策次元で押し切れたというのは、それは特例ですよ。前例がないでしょう。 泉市長には権限があります。方針決定権と予算編成権と人事権があるんです。この権限と市民が味方になれば、できる。みんな勘違いしてるんです。市役所を味方につけなあかんとか、議会の多数派とか。嘘です。私は市長になる前から、市役所が全敵でも、議会が全敵でも、やれる自信がありました。 菅政党とか政治集団とかそういうものを前に出さないで、すべてが大衆に依拠している。それができちゃった例はないと思うんですよ。長野県知事選で田中康夫がダム建設を止めるとか、幾つかのイシューで議会を敵に回して勝ちましたね。リコールされても、選挙で勝った政策でどこまでやり抜けるかは別として、選挙での勝ち負けでいうと、都道府県まではいけるという前例はあります。国政レベルでどういうことが可能なのか、それが、これからの最大の課題ですね。 泉市長レベルはシンプルな1次方程式なんですよ。国政はいっぱい入り組んでる連立多元方程式ですから、もっと複雑です。私の好きな将棋に喩えますと、明石市長レベルだと詰将棋みたいな感じです。国政は完全に、藤井聡太が八冠を維持するような感じだから、基本的に勝ち続けるイメージかな。かなりそこは違いますね。明石では子ども予算を2・4倍まで増やしたけど、3倍、4倍まで増やすと、他の予算にシワ寄せが出てきかねない。だから、その範囲で止めました。しかも財源に余裕をもたせて。