[MOM4908]青森山田FW石川大也(3年)_1ゴール1アシストにPK獲得!全得点に絡んだ「山田のストライカー」が勝ち獲った指揮官との”2度のハグ”
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.4 選手権青森県予選決勝 青森山田高 3-1 八戸学院野辺地西高 カクヒログループアスレチックスタジアム] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 このチームのストライカーポジションを託されたからには、必ず結果を残さなくてはいけない。そのために誰よりも努力を積み重ねてきた自信はある。倒されても、倒されても、何度でも立ち上がり、ゴールを目指す。チームのために、信じてくれる監督のために、そして、3年間の苦しい時間をともにしてきた仲間のために。 「『山田のストライカーとして、しっかり結果を出さなきゃいけない』と試合前から思っていましたし、『オレがここで点を獲って、チームを勝たせる』と思っていました。この一戦に懸ける想いは強かったですし、勝つための準備を後悔がないようにやってきたからこそ、このような結果で終われたことが良かったです」。 全国連覇への挑戦を唯一許されている青森山田高の超献身的ストライカー。FW石川大也(3年=足柄FC出身)はファイナルの舞台で3ゴール全てに絡む圧巻のパフォーマンスを披露して、県28連覇の主役を鮮やかにさらっていった。 「強い風が吹いている中で、試合の入りも局面で負けてしまったり、ボールが相手のゴール前にこぼれるシーンもなかったので、自分たちのペースになかなか持っていけなかったです」。石川は前半の展開をそう振り返る。高校選手権青森県予選決勝。八戸学院野辺地西高と対峙した青森山田は、相手の勢いに押される格好で立ち上がると、19分にサイドアタックを食らって失点。いきなり追いかける展開を強いられる。 焦ってもおかしくない状況だったが、石川はいったん落ち着いて、メンタルを丁寧に整える。「前の日からいろいろなシチュエーションを想定していたので、『やるべきことは何か』ということをもう1回自分の中でリセットして、切り替えてやりました」。自分のやるべきことを、『山田のストライカー』が果たすべき仕事を、シンプルに頭の中で整理する。 38分。石川が前線でボールを収めた流れから、MF川口遼己(3年)が右へ振り分け、縦に運んだMF長谷川滉亮(2年)がクロスを上げると、冷静にゴール前の状況を見極めていた9番は、適切なポジションに飛び込んでいく。 「滉亮がうまく抜けてくれて、クロスまで行った時に、『絶対ここに来るな』という自分の感覚があったので、中に思い切り入るというよりは、少し入るのを遅らせて、こぼれてきたボールを打とうというイメージで狙っていました」。 MF大沢悠真(3年)が残したボールは、イメージ通りに石川の目の前へ転がってくる。「ファーストタッチは結構足元寄りに入ってしまったんですけど、『しっかり振り抜こう』という気持ちで振り抜いたら、たまたま良いコースに飛んでくれましたね」。揺れたゴールネット。咆哮する9番。駆け寄るチームメイト。緑のスタンドも爆発する。 前半終了間際に記録したこの1点が、青森山田にもたらした心理的な影響はとてつもなく大きかった。「大也が同点に戻してくれて、ハーフタイムにみんなでまとまれたので、アレは大きな1点でした」(DF小沼蒼珠)「彼らもなかなかいつも通りのプレーができなかったので、前半最後のゴールがかなり大きかったんじゃないかなと思います」(正木昌宣監督)。チームは強気な姿勢を取り戻して、後半のピッチへ飛び出していく。 次の得点も『山田のストライカー』が演出する。後半3分。大沢のパスを引き出した石川は、果敢にペナルティエリア内へ侵入。シュートコースを作ろうと切り返したところでマーカーの足が掛かると、笛を吹いた主審はペナルティスポットを指し示す。「ペナの中では常にゴールを狙う意識はしていたので、そういう意識がPKに繋がったと思います」。 逆転が懸かる重要なPK。スポットには石川ではなく、川口が進み出る。「PKは(川口)遼己がずっとキッカーとして蹴ってくれていましたし、自分よりも遼己の方が自信的にも、立ち振る舞い的にも、雰囲気的にも、一番決める可能性がある選手だと思うので、もう信じて『頼む!』という形で渡しました」(石川)。信頼を寄せられた川口は冷静なキックできっちり成功。2-1。ようやく青森山田が一歩前に出る。 1点差で迎えた37分。ここも『山田のストライカー』の献身性がゴールを呼び込む。左サイドでMF西尾啓汰(3年)にボールが入ると、石川は縦へとスプリント。「西尾は1年生のころから2人組の練習もずっと一緒にやっていて、信じている部分もあって、相手の股を抜いて自分のところにパスを出してくれたので、中は見ていなかったですけど、(大沢)悠真か名倉(眞祥)が絶対に入っていることを信じて、並行に出しました」。 左から中央へ折り返した優しいボールを、大沢が確実にゴールネットへ流し込む。最終盤に奪ったダメ押しゴールで、ファイナルスコアは3-1。終わってみれば1ゴール、PK獲得、1アシストとチームの全得点に関わる大仕事を完遂した石川の躍動が、晴れ舞台への出場権を力強く引き寄せた。 今大会の石川にはストライカーナンバーの9番が渡されたが、プレミアリーグでは19番を背負っていることからもわかるように、決してシーズンスタートから今の立ち位置を確立していたわけではない。プレミア初出場は第5節の昌平高戦。だが、その試合でいきなりゴールを決めると、以降は指揮官の信頼を勝ち獲り、すべての試合でスタメン起用され続けてきた。 今や正木監督も「練習中も凄く厳しいことを言っていますし、今年の雑草魂というチームの象徴かなと。高いモチベーションでここまで来るというのは、正直驚いています。そういう彼の努力や想いの強さは我々指導者も見習わないといけないなと思うぐらい、凄いと思いますね」と手放しで称賛するほどの存在感を打ち出し続けている石川だが、この日の試合後には個人的に嬉しかったということを笑顔で明かしてくれた。 「正木さんとハグするのは今日が初めてでした(笑)。3点目を獲った時も、みんな応援席の方に行っていたんですけど、ベンチの仲間の元に行ったら、正木さんが『ナイス!』と言ってハグしてくれて、プレミアでもまだそういうことができていなかったので嬉しかったですね。点を獲った時と交代の時と2度ハグしてもらいました」。指揮官と交わした“2度のハグ”は、18歳にとって思い出に残る貴重な出来事だったようだ。 日本一に輝いた昨年度の大会はメンバー入りが叶わなかっただけに、石川の中でも主力として臨む今回の大舞台への期待感は、間違いなく今まで以上に高まっている。「選手権は自分が夢見てきた大会ですし、また一段とレベルが上がってくる大会なので、もっともっと自分にできることを見つけて、ストロングポイントをしっかり発揮して、チームを勝たせるような点を獲りたいです」。 たゆまぬ努力でたどり着いたポジションは、もう絶対に手放さない。誰からも絶対的な信頼を寄せられている、勇気と献身を兼ね備えた2024年の『山田のストライカー』。国立競技場のゴールネットを自らのシュートで揺さぶる瞬間をイメージしながら、石川大也はこれからも一歩ずつ、一歩ずつ、成長の足跡を自分の中に刻んでいく。 (取材・文 土屋雅史)
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