育児ノイローゼで買い物依存症になった女性「夫と一緒に“家族愛”を育みたかった」…結婚11年目で下した決断
出会って秒で交際
大津さんは背泳ぎの実力を活かし、高校卒業後はスイミングのインストラクターとして働き始めた。スイミングの仕事の隙間時間には、化粧品販売の仕事を入れた。 そして20歳のときのこと。友だちの紹介で、車の販売の仕事をしている同い年の男性と出会う。彼がのちの夫になる人だった。 「少し話してみて、『自分にないものを持ってる人だな』と思いました。物怖じしないところとか、強い精神力を持っているところとか、自分とは真逆で、とても魅力的に感じたんですよね」 お互いに惹かれ合っていた2人は、その日のうちに交際を決め、2~3回会った後には、「離れている理由がないよね」と意気投合。同棲をスタートした。 彼が車の販売業から清掃会社に転職すると、大津さんは彼と過ごす時間を増やすため、スイミングのインストラクターの仕事の合間に、彼と同じ清掃会社でアルバイトをはじめた。 そして同棲開始から4年後の1995年、25歳で結婚。 彼と少しでも多くの時間を過ごしたいという想いではじめた清掃会社でのバイト経験が、のちに大津さんの人生を大きく変えることになるとは、このときは知る由もなかった。 結婚からしばらくして、大津さんは妊娠し、1997年、26歳のときに出産。元気な男の子だった。 夫はとても喜び、育児にも協力的。大津さんは大好きな夫と息子に恵まれ、幸せの真っ只中にいた。
夫の起業と買い物依存症
息子の出産から約半年後、夫は清掃会社を起業する。 大津さんもバイト経験を活かして、夫を全面的にサポートするようになった。 「登記から事務から現場作業から、すべてを夫と一緒になってやらなければならない立場になったんですが、女性として生きてきて、結婚したら“妻”や“主婦”というものが付け加えられて、何も減らないのに、さらにそこへ“子育て”が加えられて……。もうどんどん、どんどん役割が増えていきました。 息子も生まれたばかりですが、夫が起業した会社もできたばかりなので、今までやったことのない資金繰りだったりとか経営のこととか、いろんなことに頭や時間や労力を使っていくうちに、どんどん疲弊していっちゃったんですよね。で、ちょっと、ノイローゼみたいになっちゃいまして……」 産後うつは、出産後1年以上経過しても発症する可能性があるという。もしかしたら、産後うつや、育児ノイローゼだったのかもしれない。 夫の起業から3年ほど経った頃、気づけば大津さんは、実質的な忙しさやそれがままならないストレスを解消するかのように、買い物依存症になっていた。 家の中は常にぐちゃぐちゃで物が溢れていた。それなのに、とめどなく新しいものが欲しくてたまらない。 ブランド物もそうでないものも、とにかく欲しいと思ったものを買わずにはいられなかった。 しかし、ひとたび買ってしまえば熱が冷め、部屋にはパッケージを開けずに放置されているものが増えていった。 「『それ、買っても使わないよね?』みたいなものもとにかく買ってきて、ぐちゃぐちゃの部屋の中で幼い息子もいるのに、夫とは会社の資金繰りの話とか、仕事の話ばかりしていましたね。いつからか、家庭と仕事が切り離せなくなっていました……」 大津さんの買い物依存症の悪化と反比例するかのように、夫は家に帰ってこなくなっていく。 「すごく悩んでいるのに、どんどん殻に閉じこもっていきました。私、いいカッコしいなのもあって、人に相談できないし、助けを求められないんです。そんな私の状況とは裏腹に、夫の会社はとてもうまくいっていました」