【#佐藤優のシン世界地図探索78】気候移民とイスラエル滅亡
佐藤 消滅させなければ、アメリカとヨ―ロッパが傾きます。すると、我々が心配しないとならないのは、700万人のユダヤ人の行方だとロシア人は言うのです。 再び離散が始まりますが、ヨーロッパは受け入れません。中東にも行き場はありません。一部はアメリカに行きますが、そのような事態になれば北米でのユダヤ人に対する抵抗感が強まります。すると、中南米とロシアに流れることになります。 ――でもロシアは、気候温暖化移民は受け入れないと......。 佐藤 ロシアはユダヤ人を受け入れます。となると、ロシアはイスラエル国家の消滅を視野に入れて、国家戦略を組まないと言うのです。こうした話は、イスラエル人やアメリカ人からは出てきません。これはロシア人の見方です。 ――視点と視野が、欧米と全く異なるのがロシア。 佐藤 要するに、イスラエルが核を使うところまでで、私の頭は止まっていたんです。だから、イスラエルが核を使った後、どうなるかをモスクワで考ざるを得なくなりました。このアメリカに対するロシアの分析をどう思いますか? ――合っていると思います。 佐藤 核を使って自国の意志を通す国が、アメリカ以外に出てくることをアメリカは絶対に許しません。核を使った国は存在できなくなります。 ――ロシアはチャンスですね。頭が良く、技術力を持ったユダヤ人がアメリカに行かないのならば、ぜひ来て欲しい。 佐藤 アメリカは世論対策で入れられないし、ヨーロッパは受け入れません。一方、ロシアは受け入れます。 ――中南米はブラジルですか? 佐藤 そうです。だから、そのような形で、ロシア人はイスラエルを見ている。 ――すると、中国の習近平はプーチンのロシアに国家経営を学ぶべきではないでしょうか。
佐藤 習近平にしても、インドのモティにしても、ロシアに比べてスケールが小さいです。やはり世界全体、地球儀を見渡す感覚にはなっていません。中国とインドは国益の枠から外に出ませんからね。 ――すると、中国の世界制覇は不可能ですね。 佐藤 だから、中国は世界制覇の野望をそもそも持っていません。 ――えっ! そうなんですか? 佐藤 いままで欧米に余りにもいじめられてきたから、そのお返しで「てめぇこの野郎!」とやっているうちに、過剰防衛になっているくらいです。 ――分かりやすいです。 佐藤 それからロシアも世界制覇は考えていません。要するに、ユーラシア地域の自分たちの領土で、とにかく生き残らせて下さいというのがロシアの目的です。 中央アジアなどかつてのソ連の勢力圏に関しては、やはり自分たちの影響下に置いておきたいわけです。経済的、文化的には自由ですが、軍事政治的にはロシアに抗う事はできない状態ですね。その条件の下で、後はどうぞという考えです。なので、一種の保護国とも言える帝国的な発想です。 ――「21世紀帝国主義」における棲み分けですね。 佐藤 そういうことです。 次回へ続く。次回の配信は2024年10月11日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生