【#佐藤優のシン世界地図探索78】気候移民とイスラエル滅亡
佐藤 その可能性があります。現代の民族大移動ですよ。我々がそこで考えなければならないのは、地球の灼熱化によって、どこに人間が流れていくかです。 理屈は簡単で、暑くて住めないということであれば寒冷地に流れます。その大きな流れは阻止できません。このものすごい民族大移動は、ロシア、シベリア方面、カナダ方面に向かってくる可能性が高いでしょう。 ――対テロ作戦のように、皆殺しでいくのですか? 佐藤 それはできません。 ――では、受け入れるんですか? 佐藤 それも無理ですね。だから、システムが必要です。移民がヨーロッパで留まってもらうシステムを作らなければなりません。 ――なんで、ロシアはそのような事を考え始めたんですか? 佐藤 アフリカとの関係が深まったから、地球灼熱化が見えてきました。この異常な暑さだと、そのうちもう人が住めなくなるんじゃないかということです。 ――なるほど。 佐藤 また、イスラエルに関しては、ロシア人は私よりはるかにラジカルな思考実験をしていました。 ――どういう思考実験ですか? 佐藤 ユダヤ人国家・イスラエルの滅亡とユダヤ人の追放は、リアリティがあるということです。 ――それはまた、なぜ? 佐藤 イスラエルは、いま3つの点で間違いを犯しています。 まず、自分たちの地政学的な状況です。周りが敵に囲まれていて、ヨーロッパとアメリカの支持が無ければ生き残れません。にもかかわらず、ハマスとの戦いであれだけパレスチナ人を殺して、ヨーロッパの支持を完全に失いました。同時にアメリカの支持も半分ぐらい失っています。 二番目は軍事力への過信です。イスラエルは周辺諸国との関係で、圧倒的に軍事力が強くなりました。そのため外交努力をせず、全ての問題を軍事力で解決できると過信しています。 かつてのイスラエルは、もう少し柔軟性がありました。しかし、以前の連載で話したネタニヤフのガラスの均衡(参考:【#佐藤優のシン世界地図探索69】イスラエルはいま建国以来の危機)なども含めて、イスラエルのエリート全体が軍事力への過信を持っています。 三番目が、核兵器への依存です。ヒズボラとイラン、シリア連合軍が自国領土に侵攻してきた場合、イスラエル軍は地上戦だったら勝てません。それは人員数の話です。そしてその場合、イスラエルは核兵器を使えば済むと思っています。 しかし、核兵器を使った瞬間、アメリカもヨーロッパもイスラエルの存在を認めません。要するに、長崎以降、核兵器を使ったアメリカ以外の国の存在を認めないということです。だから、核兵器を使った国は消滅します。 ――恐ろしい論考ですが、すさまじくリアリティがあります。