「お酒飲んで爆睡は正常な睡眠を破壊する」意外と知らない“寝酒の長期的なリスク”が明らかに
アメリカのペンシルベニア州立大学らの研究グループは、「アルコール飲料の摂取は、ノンアルコール飲料の摂取と比べて研究参加者のレム睡眠が減少した」という研究結果を発表しました。この内容について勝木医師に伺いました。 【イラスト解説】意外と知らない「寝ても疲れが取れない」原因
研究グループが発表した内容とは?
編集部: アメリカのペンシルベニア州立大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。 勝木先生: 今回紹介するのは、アメリカのペンシルベニア州立大学の研究グループが発表したもので、研究結果は学術誌「Sleep」に掲載されています。 研究には30人の成人が参加し、アルコール飲料かノンアルコール飲料のいずれかを就寝の約1時間前に摂取しました。研究は合計2回、いずれも3夜連続でおこなわれました。その結果、睡眠前のアルコールは、3夜を通じてノンレム睡眠の蓄積率を増加させ、それぞれの夜の眠り始めのレム睡眠の蓄積率を減少させました。また、アルコールはレム睡眠の総量を減少させたものの、各夜のノンレム睡眠の総量には影響しなかったとのことです。レム睡眠は「脳が活動して夢を見るような浅い睡眠」とも言われており、今回の研究でお酒を飲むと睡眠が浅くなることが示唆されました。 こうした結果について、研究グループは「睡眠前の飲酒は、ノンレム睡眠やレム睡眠の蓄積速度の変化など、睡眠構築に大きく影響することが示された。アルコールが正常な睡眠を破壊し、レム睡眠の有意な減少をもたらすことを示している」と結論づけています。その上で、研究グループは「睡眠補助剤としてのアルコールの使用は、依然として公衆衛生上の懸念事項である」と注意喚起をしています。
アルコール摂取と睡眠に関するほかの研究は?
編集部: 今回の研究テーマであるアルコール摂取と睡眠の関係について、ほかにはどのような研究がおこなわれているのでしょうか? 勝木先生: アルコール摂取と睡眠についての研究の一例を挙げると、2022年にフィンランドのヘルシンキ大学らの研究グループが実施したものがあります。 研究グループは、1万3851人分の自己報告式質問票データを用いて、36年間のアルコール摂取と暴飲暴食が睡眠の質とどのように関連しているかを調べています。その結果、睡眠不良と多量飲酒や暴飲を含むアルコール誤用との間に有意な関連が認められました。また、アルコール摂取量の多さが長年にわたる睡眠の質の低下と関連していることも示唆されています。 研究グループは「アルコールの摂取は、睡眠の質の低下と関連している」と結論づけています。