再生可能エネルギーの固定価格買取制度 / 買い取りは進んでいるの?
太陽光や風力といった再生可能エネルギーでつくった電力を、国が決めた価格で電力会社が買い取る「固定価格買取制度(FIT)」が導入されてから、1年あまりが経過しました。原発に頼らないクリーンエネルギーが注目されるなか、FITに関する申請は多いものの、実際に稼働している発電設備は一部に留まります。制度の概要をおさらいしつつ、その現状をチェックしてみましょう。
固定価格買取制度の基礎知識
FITの対象となる再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5種類。石油や石炭と違って枯渇する心配がなく、地球温暖化を促す二酸化炭素の排出も極めて少ないというメリットがあります。再生エネルギーでつくられた電力は、国が定めた固定価格で電力会社が買い取り、電気料金に上乗せされます。 買い取られる際の固定価格は、経済産業省に設置された有識者委員会で毎年決められます。FITを利用して売電するには、法令で定める要件に適合しているか、国に確認(設備の認定)してもらわなければなりません。発電事業者は、設備の認定を受けた年の価格を基準に、10~20年間にわたり一定の価格で売電できます。固定価格は再生可能エネルギーの種類や発電能力の規模によって異なり、1kW時あたりの価格で、2013年度は太陽光38円(発電能力10kW未満の場合)、風力57.75円(同20kW未満)、地熱42円(同15000kW未満)などとなっています。
■計画と稼働状況の乖離も
国際エネルギー機関(IEA)の見通しでは、世界の再生可能エネルギーによる発電量は、2016年には石炭火力に次ぐ規模に膨らみ、原発の2倍の発電量になるといいます。福島第1原発の事故を経て、FITが導入されて以来、日本でも再生可能エネルギーに注目が集まり、多くの企業が発電事業に名乗りをあげています。 経済産業省が8月20日に発表した資料によると、FITの導入から2013年5月末までに設備認定を受けた新設計画は、発電量で約2237万kWにもなり、発電能力ベースの単純比較で原発20基以上に相当します。 。驚くべき数値ですが、制度が導入された2012年度から2013年5月末までに稼働できているのは、約336万kWに留まっています。表を見ると、多くの企業が関心を示す「住宅以外(非住宅)の太陽光発電」における設備認定と稼働状況の乖離が顕著で、発電事業の難しさがあらわれています。