ポルシェが主力車種マカンの完全電動化に踏み切った理由
スポーツカーと電動化
そして、本業のスポーツカーの電動化にも乗り出す。まず718ボクスター&ケイマンのBEVモデルが、順調にいけば来年にも発表される見込みだ。実は昨年末、面白いクルマに乗せてもらう機会があった。718ケイマンをベースとした電動レーシングカー 「GT4 eパフォーマンス」だ。 ポルシェのマーケティング活動において切っても切れないのがモータースポーツ。実はポルシェは(ジェントルマンドライバーと呼ばれる)顧客が自らレーシングカーを購入し、レースに参加する“カスタマーレーシング”というフォーマットをつくった先駆者でもある。 その代表的なものが911カレラのレーシングバージョン(通称カップカー)で競われる“世界最速のワンメインクレース”、「ポルシェカレラカップ」。30年以上の歴史があり、現在世界10カ国以上で開催されている。日本でも2001年にカレラカップジャパン(PCCJ)がスタートし、20年以上続く人気のレースだ。 GT4 eパフォーマンスは、この911のカップカーのようになり得るのか。ポルシェの開発チームは、市販車とレースカーの開発を並行して進めながら、いまカレラカップに参戦しているチームやドライバーをはじめすべてのステークホルダーからフィードバックをもらうため世界ツアーを敢行していたのだ。 ただし、開発者たちが話していたのはGT4 eパフォーマンスが、911カレラカップカーにとって代わるものではないということ。最終的に判断するのは市場であり顧客で、そのための選択肢を用意するのだと話していた。ポルシェのトップも、最後まで内燃エンジンが残るのは911になるだろうと発言している。 ポルシェは、サステナブルであることが難しいスポーツカー製造を、売れるSUVで原資を生み出し成立させるビジネスモデルを構築したブランドだ。その手法が今後も通用するのかどうか、新型マカンはまさに試金石となるモデルと言えそうだ。「電動化しようとも、スポーツカーをつくり続ける」という、ポルシェの強い意志を感じる。
藤野 太一