初音ミクの人気の理由と未来
なぜこんなに人気を得たのか?
初音ミクはなぜこんなに人気を得たのでしょうか。太下さんは、二次創作をしやすくした「技術的な下地」があったといいます。例えばニコニコ動画の存在です。「初音ミクの人気拡大を語るときに、ニコ動の存在はやはり大きい。2007年1月にニコニコ動画がβバージョンとしてサービスを始めていて、初音ミクの発売のタイミングと重なる」。 技術的な下地はそれだけではありません。同年12月には、クリプトン社 がコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」を開設。初音ミクのソフトの歌声を使った楽曲やイラストを投稿することができるようになりました。 また、それと同じころ、イラストの投稿に特化したSNS「ピクシブ」が、ほぼ現在の形に近いサービスをスタート。2008年2月には、3Dモデルを動かすためのソフトウェア「MikuMikuDance」の初版が公開されています。 ただ、投稿が広がっていったのは、初音ミクのキャラクターの魅力もさることながら、「二次創作をサポートする環境づくりも大きい」と太下さんは指摘します。 クリプトン社が、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」を定め、非営利などの条件を満たせば、初音ミクなどクリプトン社が権利を持つキャラクターの二次創作物を作成して公開しても良い、としたのです。太下さんは「非常にオープンな著作権関連の仕組みを制定し、これによって一気に二次創作が広がっていった」と評価します。二次創作を側面からサポートするソフトウェアやサービスが、初音ミクの発売前後に始まり、二次創作が活性化し、ネットを介して一つの作品から派生した作品が生まれるという「創造コミュニティ」が形成されていった、というわけです。 もう一つ。太下さんは、初音ミクの当初設定の絶妙さを挙げます。「ミクは年齢、身長、体重と3つのイラストが公表されていただけで、細かい詳細設定はされていない。ユーザーは、そこに自分の物語をいかようにも投影することができた」。