鮮明に表れる球児色「今までと同じでいいのかバリエーションを持たせたい」…紅白戦2番に佐藤輝・前川
メジャー経験生かす
「球児色」が鮮明に表れていた。高知県安芸市で行われている阪神の秋季キャンプで3日、初実戦となる紅白戦が組まれた。目を引いたのが2番打者。藤川監督は紅組に佐藤輝、白組には前川を入れた。 【写真】 打撃練習に取り組む佐藤輝。紅白戦の2番起用にも「米国っぽい。長打を狙いたい」と意欲的だった
日本では一般的に、バントや進塁打などで「つなぎ役」となる打順。岡田前監督も、小技のきく中野を2番に固定し、長打力のある佐藤輝、前川を5番、6番に据えることが多かった。
一方、米大リーグでは近年、2番に強打者を置く起用が主流だ。メジャー経験のある藤川監督は、実験的な試みを「今までと同じでいいのか。バリエーションを持たせたい」と説明した。
若手に複数の守備位置
チームの可能性を広げる――。キャンプではそんな狙いが随所で見て取れる。一軍定着を目指す若手に、複数の守備位置を求めているのも、その一つだ。
5年目の今季、プロ初アーチを放った外野手の井上は、主に一塁でノックを受ける。ミットは巨人・岡本和と同じタイプを新調した。
大阪・履正社高の4番として、夏の甲子園制覇に貢献した有望株。打撃練習で軽々と柵越えを放つパワーが魅力だ。ただ、外野には近本、森下ら実力者がそろうだけに、「試合に出られる可能性があるなら」と内野守備でゴロに食らいつく日々を送る。
今季、二軍で打率3割2分1厘をマークした20歳の捕手・中川は、外野の練習も始めた。来季こそ一軍に食い込もうと、「試合に出るために何でもやる」と目をぎらつかせる。若手たちの必死な姿に、指揮官は「新しいことに取り組みながら前向きにやっている」と目を細めた。
藤川監督は高知商高(高知)でプレーしていた頃、寮の机に「メジャーに行って世界一になる」と記したという。2009年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝し、13年には米大リーグのマウンドに上がる夢をかなえた。
ただ、同高で指導にあたった正木陽さん(63)が「後ろを振り向かない。引退時も(日米通算250セーブに)あと5セーブだったのに、そこにこだわらなかった」と話す通り、過去に縛られるよりも、未来を志向する性格だ。
連日、日が暮れるまで球場では打球音が響く。まさに野球に没頭する選手たちを、監督は満足そうに見つめた。「誰も『しんどい』と言わない」。太平洋を望む安芸の地から、新たな航海が始まった。 (細田一歩、豊嶋茉莉)