ロシアの五輪参加を条件付で認めたIOC裁定の是非
WADA(世界アンチドーピング機関)からのロシアの国家主導によるドーピングを指摘され、「ロシア選手団のリオ五輪参加を拒否すべき」と勧告を受けていたIOC(国際オリンピック委員会)の緊急理事会が24日、開かれ、ロシア選手団のリオ五輪参加を条件つきで認め各競技のIF(国際連盟)に最終判断を委ねた。 ロシアの共同責任と個人の権利の間をとった“灰色決着”で、各国際競技団体に判断を丸投げした形だが、この裁定を巡って、国内外で賛否が渦巻いている。さっそく勧告を無視されたWADAは、「ロシアの国家主導のドーピングは、スポーツの高潔性を脅かすもの」と主張して、IOCの裁定を批判。 米国とカナダのそれぞれのアンチドーピング機関も、「IOCはリーダーシップを発揮できなかった」と、ロシアの参加を拒否しなかったIOCの判断を叩いた。 米メディアも「USA TODAY」が「IOCは魂を売った。強力な組織からの圧力があった」と、強烈に批判すると同時に、さっそく各国際競技団体の反応を伝えた。 ロシアの参加に反対の姿勢を示したのは、ウエートリフティング連盟。米国バイアスロン協会のCEOの「トーマス・バッハ(IOC会長)は、クリーンな選手に背を向けた」というコメントも紹介された。 一方、国際テニス連盟は、リオ五輪のロシアのエントリーを承認したと発表。体操と水泳の国際競技連盟も、それぞれIOCの裁定と同じく包括的にロシア選手団全員の参加を拒否するという考えには、反対の姿勢を明らかにした。日本もJOCや選手らが、おおむねロシア選手に出場機会が残った裁定に理解を示した。 8月5日の開幕まで、ほとんど時間がない中でドーピングがクリーンな選手をしっかりと証明することが可能なのか、などの問題も残ったままで、IOCが曖昧な裁定を下したことで、競技団体ごとに、ロシア選手を全面拒否するか、一部を受けいれるかが、バラバラになるという異常事態を招くことになった。 スポーツの国際情勢に詳しいスポーツ総合研究所の所長で、東海大学国際教育センター教授の広瀬一郎氏は、「基本的には五輪の選手選考は、IF(各国際競技団体)が行うものであるという原則がある。1984年から五輪にプロが参加したが、それを認めていなかった日本では“選手選考は各国際競技団体がするものだから私たちは知らない”という立場を貫いたことがあるが、今回のIOCの裁定も、五輪の原則に従ったにすぎない。 ロシアの国家としての共同責任を問うと、それは政治的な判断になりかねないため、あえて避けたのだろう。東海大学国際教育センター教授今後、認める団体、認めない団体が出てくる中で、クリーンさを保ち、政治的な色を消すことにもつながり、五輪精神にも反しないギリギリの判断をしたと思う」と、今回のIOCの裁定を評価した。