人が辞めていく職場は「なんでもかんでも電話連絡」しようとする。では、人が辞めない組織はどうしている?
「あなたの職場では、いつも電話が鳴っていませんか?」 そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。 それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「なんでも電話で連絡する職場」の問題点について指摘します。 ● 日常的に電話を使う組織 社内はもちろん、顧客やお取引先との確認や連絡も電話がメイン。営業活動も電話によるアプローチ、いわゆるテレアポが主流など、日常的に電話を使用する職場もある。 メールやチャットで連絡していても、送信した後に確認のための電話を必ず入れる。それがマナーだと教わり、実践している人もいるかもしれない。 電話には声のトーンで相手の状況を知ったり、自分の意思や状況を伝えたりしやすいメリットもある反面、以下のデメリットもある。 ・場にいない第三者に正確かつスピーディーに情報を伝えにくい ・情報を正確に残せず「言った・言っていない」の問題を誘発しやすい ・相手が不在の場合、「伝言」「折り返し電話」などの手間や時間がかかる ・掛け手の都合で相手の集中力や注意力を一方的に奪ってしまう ・通話の声が、周りの人の集中力や注意力を損なう ・通話の内容が周りに聞こえるなど、情報セキュリティ上問題がある コミュニケーションにおけるコストであり、リスクでもあるのだ。 ● 電話は最終手段の組織 一方で、電話はほとんど使わない、または最終手段であると認識している職場も少なくない。 業務上のコミュニケーションはチャットやメールなどのテキスト(書き文字)が主流。電話は、たとえば社外でミーティングや待ち合わせをした当日に相手が現れない、または自分が遅れそうなときに連絡をするなど緊急連絡のための手段であり、他に連絡を取り合う方法がない場合の最終手段。このように電話の利用場面を限定している職場もある。 「仕事で電話を使わなくなったことで、ストレスが大きく軽減した」 伝統的な日系企業からスタートアップ企業に転職した人がこう呟いていた。転職前の職場では、電話がかかってきたら手や思考を止めて対応していたそう。 それが当たり前だったが、現在の職場は電話が一切鳴らない。自分からかけることもなく、急ぎの連絡もチャットで関係者に一斉送信。集中力が削がれることなく、伝言の手間もなく仕事がしやすいとしみじみ語っていた。 ● 相手の都合に配慮しているか? その場限り、かつ当事者限りで済まされる内容を伝達する手段として、電話は優れている。 反面、前述のような多くのデメリットや非効率も生んでいる。電話でのコミュニケーションはラクであり、考えが整理されていなくても、思いついたままに話せてしまう。しかしそれは、相手の時間や手間を奪った上に、言語化のコストを相手に負担させていることにもなる。 なんでもかんでも電話していては、社内のみならず社外においても迷惑がられ、共創の妨げになる。相手の都合を考慮しない自分勝手な体質の醸成にもつながりかねない。 ● 電話の使い方を今一度見直してみよう (当社も然りだが)法人全体として、電話を使用していない企業もある。今一度、電話の使い方をチームや組織で話し合ってみよう。 自分の都合で相手の時間や集中力を奪っていないか、伝言や折り返し連絡などの手間や無駄を生んでいないかを、まず疑ってみたい。 「お客様への定期連絡はメールでいいのではないでしょうか?」 「お取引先とも、チャットを使った気軽なコミュニケーションをしてみては?」 「正直、電話の声が気になって仕事に集中できません……」 その上で、電話の利用場面を限定してみてはどうか。 電話文化を変えたいなら、まずはあなたが電話をやめてみよう。緊急時を除き、チャットやメールで連絡する。電話がかかってきても、しつこくチャットやメールで返す。そもそも電話に出ない(筆者も電話には基本的に出ない主義)。こうして電話しないキャラを確立しよう。 一歩踏みだす! ・電話をすることで相手の時間や集中力を奪い、手間をかけていないか話し合ってみる ・あなたが電話断ちをし、電話しないキャラを確立する (本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
沢渡あまね