一度不採用になった警察官…デザインの特技生かし、オリジナル啓発ポスター作製「一件でも多く犯罪被害防止を」
滋賀県警高島署生活安全課・巡査部長 足立義人さん 34
「自転車の鍵…かけようぜ」――。 目を引くキャッチコピーと警察官の写真を大胆に配したポスターは、滋賀県警高島署のオリジナルだ。手がけたのは、生活安全課巡査部長の足立義人さん(34)。デザインを学んだ大学や制作会社での経験を、同署の啓発活動に生かしている。 滋賀県高島市出身。高校まで市内で育ち、卒業後の進路に小さい頃から刑事ドラマが好きで憧れだった警察官を選び、滋賀県警に応募するも不採用に。成安造形大(大津市)に進学し、卒業後は京都市の映像制作会社に就職した。その後、結婚を機に高島市に戻ることになり、「最後にもう一度挑戦しよう」と再び県警の採用試験を受け、合格。2017年に拝命し、同署には22年から勤務している。
同期の巡査長をモデルに起用
ポスター製作は、管内で自転車の盗難被害が相次いでいることを受け、今年9月に足立さんの経歴を知っていた上司から「市民のために、心に響く啓発ポスターをつくってほしい」と頼まれたのがきっかけ。同課に所属する同期の巡査長・山田柊斗さん(30)をモデルに起用し、「常に目を光らせているぞ」と言わんばかりの顔つきに、大きな手で自転車を包むデザインで「警察官が自転車を盗難から守る」という強い意志を表現した。 素材の写真撮影から編集まで一人で担当し、文字のレイアウトや色合い、空白の使い方やモデルの表情など、これまで培ってきたグラフィックデザインのノウハウを発揮。「テーマが伝わりやすく、パッと目に入るデザインを心がけた」といい、日常業務の合間を縫って、約10日間で完成させたという。
また、特殊詐欺の被害者家族から「本人が被害に遭っていることを認めなくて、話を聞き入れてくれない」と相談を受けた経験から、足立さんは詐欺に関する啓発ポスターの製作を自ら志願。「特殊詐欺」と、投資話を持ちかけたり、恋愛感情や親近感を抱かせたりして金銭をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」への注意を呼びかける2種類を作った。 特殊詐欺のポスターでは、高島署勤務と、市民により身近な交番勤めの警察官をモデルに採用。「市民を守るという熱い気持ちと、警察官のイメージカラーを意識した」という青い炎を背景に描いた。実際の被害者の声などを踏まえ、課長の田中恭平さん(43)と相談して、「電話で還付金…? ありえないね」などと簡潔で分かりやすい表現を心がけた。
ポスターは市内の公共施設や金融機関に配布されたほか、量販店の駐輪場などに掲示されている。「高島は自然豊かで子育てもしやすい大好きな町。特技を生かして、自分が育った町に貢献できてうれしい」と足立さん。「一件でも多くの犯罪被害を防止できるよう、市民に寄り添って啓発を強化していきたい」と気を引き締めている。 (青山大起)