パリ五輪まもなく!世界が注目「セーヌ川」開会式の粋な演出と残される課題
テロへの厳戒態勢
しかし、この開かれた水上開会式で、大きな課題となるのがテロに対する警備問題である。米国では前大統領のトランプ氏が銃撃される事件があった。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの衝突など中東情勢、世界には不穏な緊張が続いている。パリ警視庁は、過激派組織「イスラム国(IS)」や、テロ組織「アルカイダ」などによるテロへの警戒を強めている。セーヌ川の開会式パレードも、当初は観客60万人想定だったが、それを半分の30万人にした。当日は、4万人を超える警察官や兵士を投入して、厳戒態勢を取る。
観光名所も競技会場に
今回のパリ五輪は、新たな競技場ではなく、既存の施設を競技の会場として有効活用する。エッフェル塔やコンコルド広場など、多くの人が訪れる観光名所も、熱戦の舞台となる。警備は、もちろん開会式だけでなく、期間中は連日5000人もの兵士が、パリ市内に常駐するという。そして、市民には、大会期間中、夏のバカンスや、コロナ禍で導入したリモートワークを活用するなど、パリを離れるよう呼びかけもされている。パリはいつもの夏とは違った姿を見せることになる。
セーヌ川の水質問題は深刻
セーヌ川で課題になっているのは、開会式の警備問題だけではない。水質の問題は深刻だ。かつては泳ぐことができたが、下水道施設がなかなか整備されず、雨が降ると大量の汚水が流れ込んだ。20世紀初めからは、ついに遊泳禁止になった。今回の大会で、セーヌ川はトライアスロン競技の会場などとして使われる。6月に1週間行われた事前の水質検査でも、大腸菌の濃度が基準値を上回り続けた。大会期間中に大雨が降ると、その汚染が進む可能性もある。
猛暑の中での大会
さらに、猛烈な暑さという問題もある。2023年は"世界で最も暑い夏"と言われた。地球温暖化の中、その暑さが1年だけで収まるとは思えない。大会期間中は、1年でも最も暑さがきびしい時期である。2019年の夏には、パリで気温42度が観測された。東京五輪の際も、参加選手や観客を暑さから守るため、マラソンなどの会場を東京から、北海道の札幌に移す対応が取られた。猛暑の中での大会、対策も必要である。 フランスでは、先に行われた国民議会(下院)の決選投票で、マクロン大統領の与党連合など、どの勢力も単独過半数に達せず、政治も混迷の度を深めている。世界が注目するセーヌ川の開会式から始まるパリ五輪。国内政治、テロ対策、環境問題、さらに温暖化による暑さと、様々な課題を抱えたまま、いよいよ開幕を迎えることになる。 【東西南北論説風(507) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
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