埼玉県の「高校共学化」、浦和・大宮と浦和一女の違いから考える、ジェンダー同等の視点以外に不可欠な視点とは
男子校は理系、女子校は英語国語のレベルが高い傾向
取材をしていると、伝統男子校の理系教育の充実ぶりには感心する。例えば、東大や医学部への合格実績の高さで知られる、東京・新宿区の海城中高には、2021年に「サイエンスセンター」ができた。1つの建物がまるまる理科の教育施設になっている。施設での発電量や電力使用量が表示されるパネルや、掘削した岩石などの地質資料も展示され、さながら公の科学館のような作りだ。物理、生物、化学、地学のそれぞれに実験室があり、各科目の教員たちのアイデアで授業がしやすいように工夫されていて、教育と施設が結びついている。 また聖学院は、授業中に教員が「実験をした方が理解が進む」と判断した際にいつでも実験できるよう、6つの理科実験室を用意している。 一方で女子校は英語や国語などの文系科目の教育に強い。女子学院や雙葉、フェリスといったミッションスクールは、ルーツがキリスト教で開国の宗教のため、英語教育を得意として偏差値を上げてきた。 雙葉や白百合の中学3年では英語以外にもフランス語が必須で、高校生からはフランス語を選択することもできる。そのため、大学入試をフランス語で受けるケースもしばしばだ。フランス語の受験者は少ないため、英語受験に比べて難易度が低く受験では有利になる。 また、この5年で大きく偏差値を伸ばしている頌栄は、帰国生の割合が2割ほどいるため、全体の英語レベルが高い。一般生でも、週6時間のうち2時間はネイティブの教師から英語を学び、高1で英検2級(高校卒業レベル)を取得するのが平均的だという。それを反映してか、2024年入試での慶応大学の合格者は132人で、全高校の中でもトップ10にランクインしている。 女子校は国語の教育にも力を入れているケースが多い。図書館は圧倒的に女子校のほうが充実している印象があるし、そこに置かれている本に「読み込まれている形跡」があるのだ。女子校だと人気作家の新刊などは予約が殺到していたりするが、男子校は人気の新刊でもまっさらな状態で置かれていたりする。 三輪田は「読書の三輪田」というキャッチコピーがあるように読書教育が充実していることで知られ、もちろん図書館も充実している。吉祥女子も取材時に「うちの生徒は本を読みます」と、8万2000冊の蔵書を誇る図書館を見せてくれた。 一方で男子校では難関校も中堅校も生徒が本を読まないという悩みを教員から聞くが、共学でそういう話はあまりない。男女が共に学ぶことで苦手な部分が改良されていく流れがあるのではないか。