埼玉県の「高校共学化」、浦和・大宮と浦和一女の違いから考える、ジェンダー同等の視点以外に不可欠な視点とは
数学のカリキュラム進度が大学入試に影響する
最難関大学の入試には非常な難問が出るので、いわゆる「先取り学習」が必要で、高校範囲は早めに終わらせて大学受験に向けたトレーニングをしなくてはならない。そのため、進学校は通常より授業の進度が速いが、中でも数学は特に速く進める必要がある。 数学のカリキュラムを見てみると、県立大宮は高1の9月から数2を学ぶのに対して、浦和一女は高1で数1・高2で数2・高3で数3を学ぶとしており、進学校のカリキュラムになってない。ちなみに県立浦和の進度は、県立大宮よりもさらに早いという。実際、数学が必須の理工系学部や政経学部が人気の早稲田の合格者数は、浦和一女37名、県立浦和58名と差が21名ついている。 一方で、慶応は、英語重視の入試だからか、県立浦和と浦和一女で差がない。同じく英語重視の上智は、県立浦和6人に対して浦和一女26人。立教は県立浦和1人に対して、浦和一女107人と圧倒的に浦和一女の合格者が多い。 また外国語大学の最難関、東京外語大は、県立浦和がゼロなのに対して浦和一女9人。浦和一女には、英語を得意とし外国語を学びたい生徒が多いことがわかる。浦和一女の公式サイトには、英語を英語のまま理解する力を養う「多読プログラム」を実施しているとある。 とある塾の講師は「浦和一女に受かる子の中には英検2級を中学3年で取得しているケースもしばしばあります。入試の段階から英語が得意な子が選抜されていきますね」と語った。 実は私立女子校でも、数学をはじめとする理系授業の進度が遅い学校は多い。中学受験の有名な算数講師が、自著の中で「男子には男子校へ、女子には共学へ進学することを勧めている」という旨を書いていた。これはどういう意味かと考えていたが、取材をするうちに見えてきた。 大手塾の算数講師は言う。 「理系教育のレベルが高いのは、男子校>共学>女子校の順です。中学受験では算数が得意だった女子が、難関女子校に進学してから、学校の数学のカリキュラムが十分でないために失速していく例を山ほど見てきました。それであれば、理系教育のレベルが高い共学に進学したほうがよいという発想があっても当然です」 今、中学受験で、教育熱心な保護者が娘を共学に入れたがる1つの理由はこれである。理系教育という面では女子校は共学や男子校に比べて物足りないケースが多いのだ。と、いうか、男子校の理系教育が素晴らしすぎるのだ。