ウクライナに国境を侵されたロシア、「とてつもなく大きな」反撃を用意か
越境攻撃の目的は
ウクライナの政府当局者たちは今回の越境攻撃について概ねコメントを避けているが、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、一連の攻撃は「戦争を侵略者の領土に押し出すための行動」だと、初めて越境攻撃を認めた。 作戦の具体的な目的は依然としてはっきりしないが、一部には、クルスク州への進軍はウクライナにとって、和平交渉にあたって立場を有利にするための材料だと推測する声もある。 あるいは、ロシア国民に戦争がロシアのすぐ近くで行われていることを強く認識させる一方で、ロシア政府に対しては、ウクライナ東部の激戦地から越境地域に軍資産を分散引させる効果も期待できる。 ウクライナのある政府関係者(匿名)はAFP通信に対して、「越境攻撃の目的は敵の戦力をできるだけ分散させて最大限の損失を与え、ロシアが自国の国境を守れないことを示して国内を不安定化させることだ」と語った。 こうした見方に対しロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は11日、ウクライナによる越境攻撃はロシアの民間人を怯えさせることが目的であり、「軍事的な観点からは全く意味をなさない」と反論。 テレグラムへの投稿でさらに、「近いうちにロシア軍が厳しい対応を取るだろう」とつけ加えた。 報復は「数発のミサイルでは済まない」 前述の匿名の情報筋はタイムズ紙に対して、ロシア軍による報復は「ミサイル数発では済まない」だろうと指摘。ロシアは数百発の巡航ミサイルや弾道ミサイルを発射する可能性があり、また戦争初期からウクライナを脅かしてきた悪名高い自爆型ドローン「シャヘド」を使用する可能性もあると示唆した。 ロシア軍による大規模な空爆は既に始まっている。ウクライナの当局者らは11日、首都キーウへの夜間のミサイルおよびドローン攻撃で、男性とその4歳の息子が死亡したと発表した。 ウクライナのオレクシー・ゴンチャレンコ議員は本誌の取材に対して、ウクライナの各都市は大規模な爆撃には慣れていると述べ、「特別な報復があるとは思わない」と予想する。 ロシアはキーウなどウクライナ国内への攻撃を少し増やす可能性があるものの、スーミ州に攻勢をかけたり、ウクライナ東部の前線にこれまで以上に圧力をかけたりする可能性は低そうだと述べた。 だがウクライナ軍の元特別顧問で現在はアメリカン大学キーウ校の学長を務めるダニエル・ライスは、ロシアが民間人の多い場所への攻撃を増やしたり、滑空爆弾でウクライナを攻撃したりする可能性があると本誌に語った。 ただし、ロシアの軍用機がこれらの爆弾を投下するには、ウクライナの携帯式地対空ミサイルや、新たに配備された長距離空対空ミサイルを搭載したF16戦闘機を相手に戦わなければならないと指摘した。