ウクライナに国境を侵されたロシア、「とてつもなく大きな」反撃を用意か
<ウクライナ軍に領土を奪われ住民を退避に追い込んだロシア軍は、このままでは国境を守る力がない無能な軍として国民の不興を買う。プーチンも同じだ>
ウクライナ軍がロシア国境地帯のクルスク州に進軍を続けるなか、ウクライナはロシアからの「とてつもなく大きな」反撃に備えている。 【動画】国境近くを走るウクライナ戦車、ウクライナ戦車をドローンで破壊するロシア兵 ウクライナ国防当局のある高官(匿名)は英タイムズ紙に対して、「ロシアはきわめて厳しい対応を取らざるを得ない。国際社会に対して、ロシアは全能でありクルスク州への攻撃のようなことをすれば必ずその罰を受けると示すような対応だ」と述べた。 8月6日、ウクライナ軍は同国北東部のスーミ州から国境を越えてロシア西部のクルスク州に入り、攻撃を開始。すぐに複数の地域を制圧した。ロシア側にとってこれは、約2年半前にウクライナとの全面戦争が始まって以降、最も本格的な越境攻撃だ。 ロシア政府はこれまで国民に対し、これまでウクライナ軍の侵略を阻止してきたのはロシア軍だと述べてきたが、ロシア政府の11日の報告は、ウクライナとの国境から最大30キロ入った地点にあるオプシチー・コロデツを含む複数の集落で戦闘が行われていることを示唆している。 ロシア国防省は12日、ウクライナ軍が前日にオプシチー・コロデツの東にある集落カウチュク周辺を「突破」しようと試みたと発表。ロシア軍が、ウクライナ軍の戦車1両と(アメリカから供与を受けた)ブラッドレー歩兵戦闘車8両を破壊したと明らかにした。本誌はこの情報について、独自に確認を取ることができなかった。 クルスク州で28の集落を制圧 ソーシャルメディア上には、ウクライナ軍の兵士たちがクルスクの集落にあるロシア国旗を引き下ろし、ウクライナ国旗と取り替える様子とみられる動画が出回っている。 ロシア政府はまた、国境地帯の複数地域でウクライナ軍撃退のための「対テロ作戦」を展開している。作戦を率いるのは、ソ連時代のKGB(国家保安委員会)の後継組織であるFSB(連邦保安局)だ。 米シンクタンクの戦争研究所は11日、ウクライナ軍が過去数日でクルスク州の西部と北西部に進軍した可能性が高いと述べた。 クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は、12日のウラジーミル・プーチン大統領との会議の中で、ウクライナ軍が州内の28の集落を制圧し、これらの集落の住民2000人が行方不明になっていると報告した。 またスミルノフは、クルスク州の国境地帯からは約12万1000人が避難たとも述べた。隣接するベルゴロド州のビャチェスラフ・グラトコフ知事も、地元当局が国境地帯近くに暮らす住民の避難を開始したと明らかにした。 ロシア当局は今回の事態に「かなり困惑しており、領土の喪失と民間人の避難は、ロシアに自衛能力がない証拠としてロシア国内で不評を買うだろう」と、英シンクタンク「王立統合軍事研究所(RUSI)」の軍事科学担当ディレクター、マシュー・サビルは、指摘した。 プーチンは先週、ウクライナによる越境攻撃を「大規模な挑発行為」と称し、12日には、「われわれの領土から敵を追い出す」べきだと述べたと、ロシア政府は発表した。