「後出し」「分裂選挙」都知事選の歴史 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
石原氏は芥川賞作家で、俳優の故石原裕次郎さんの兄。自民党衆院議員を長く勤めて大臣も歴任しています。ただ1995年の衆院本会議で勤続25年表彰を受けた際の謝辞で、議員辞職を表明しました。所属する自民党を含めて「すべての政党」は「最も利己的で卑しい保身」に走っていると痛罵し、記者会見でも「何もしない政党には、とてもいる気がしない」と話していました。したがって出馬は驚きを持って受け止められ、既成政党批判の受け皿にもなって勝利を収めています。 その石原知事が4期目の途中で辞めたために2012年に都知事選が行われました。石原知事は猪瀬直樹副知事を後継に指名しており、自民・公明と石原氏が代表を務める日本維新の会から支持・支援を受けました。政権末期で勢いがなく衆院総選挙と重なった民主党は、独自候補を立てる余力がなく告示日8日前に立候補を表明した猪瀬氏が圧勝しました。 猪瀬氏は作家で小泉純一郎政権下の2002年「道路関係四公団民営化推進委員会委員」となり旺盛な取材力とマスコミへの露出で知名度も高い候補でした。 猪瀬知事が「政治とカネ」問題で辞職して行われた14年の都知事選は「原発ゼロ」が話題となりました。前年から共産党と社民党などが推薦する宇都宮健児氏に加えて、細川護煕元首相が小泉元首相の全面支援を受けて「原発ゼロ」を訴えます。 舛添要一氏が出馬表明したのは細川氏と同日(告示7日前)なので明白な「後出しジャンケン」ではありません。結果は「原発ゼロ」票が宇都宮氏と細川氏に二分され自公の支援を受けた舛添氏が快勝します。 舛添氏は国際政治学者。討論番組からバラエティーまで幅広いテレビでの活躍があり参議院議員にもなり厚生労働大臣も務めました。2009年の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で「今、日本の首相に一番ふさわしい政治家は」という質問への回答でトップになったことも。ただ自民党が同年の総選挙で民主党に大敗した翌年に自民党を離党し、除名処分となっています。