“裁判官の会議”は「見られたら、とても恥ずかしい」… 現職の敏腕判事の“勇気ある発言”を待ち受けていた「運命」とは
裁判官会議で“勇気を振り絞って”「提案」「質問」をしてみたら…
それでも、私の経験では2回だけ出席裁判官から改正案や質問が出たりしたことがあった。 1回目はさいたま家裁の裁判官会議である。少年審判を担当していた大ベテランの裁判官が、同じ少年に対する後続の事件は、なるべく同じ裁判官に配点する規則に改正したらどうかというような提案だった。 私はもろ手を挙げて賛成した。なぜなら、私も東京高裁で、同一当事者間の同一日に言い渡された離婚訴訟と関連訴訟(その内容によっては、現行法では家裁で併合審理できるが、当時は地裁の管轄で、別の事件記号が付され、基本的に併合審理はできないものとされていた。)の記録が控訴審に同時に届いた場合などに、連番の事件番号を付した上で別の民事部に配点していたことを極めて不合理に感じ、改正案を考えた経験もあったからである。 しかし、突然の提案だったため、他の裁判官には顧みられず、否決された。 2回目は、私自身が勇気を振り絞って疑問を提起した質問である。 横浜地裁に転勤して最初の裁判官会議で、私の転入を含む4月1日付けの事務分配の改正が、あろうことか所長の臨時「応急措置」で行われており、その追認を求められたからである。 事務分配は裁判官会議の最重要議案である。それも、4月1日の定例の異動に伴う大改正である。 所長に権限を委譲し続けて最後に残った最重要議案まで、たとえ形式的になっていたにせよ、裁判官会議の議決権を奪うのか。 私は驚愕(きょうがく)して予定外の質問をせずにはいられなかった。 「前任地のさいたま地家裁では、3月に臨時裁判官会議を開催して毎年恒例の4月の事務分配改正案を議決していた。臨時裁判官会議を横浜地裁ではなぜ開けないのか。 たとえば、支部が遠方にあり、転勤直前の時期だから、裁判官全員が本庁に参集するのが難しいとか、何か事情があるのならば教えていただきたい。」と。 これに対する議長であった所長の発言には更に驚愕した。開口一番、「君はこの議案に反対なのか!」と一喝してきたのである。 私はひるまずに「そういうわけではありません。ただ、事情を知りたいだけです。」と応答した。しかし、結局、事情の説明はされなかった。おそらく、所長は、私のような問題意識をまったく抱いていなかったため、答弁不能だったのだろう。 その晩に開催された裁判官懇親会では、私より年配の弁護士任官者から「あんたの言うとおりだ。」と賛意が示された。その後、未確認情報ではあるが、私が大分地裁に転出した直後、横浜地裁でも3月に臨時裁判官会議を開くようになったと聞いた。