診察での「今日はどうしましたか?」に対するベストな答えとは…小児科の開業医が明かす〈患者との距離問題〉
◆研修医時代の思い出 研修医だった頃、病棟で患者の呼吸が止まりそうになった。指導医がぼくに向かって「酸素バッグ、持ってこい!」と叫んだ。ぼくは処置室の棚から「アンビュー」と呼ばれる酸素を肺に送り込む楕円球の形をしたバッグを手にした。病室に駆け込むと、先輩の先生が怖い顔で大声を出す。 「早くしろ、バッグ、バッグ!」 「はい!」 ぼくはピタリと足を止めて、一歩二歩と後ろへ後ずさった。 「ばか!バックじゃねえよ、バッグだよ!」 人は緊張するとこんなものである。 男はときどき何かを「しでかす」ことがあったりして、ちょっとコミュニケーションの力が弱かったりするが、これからはますます男も育児の時代である。どんどんお子さんを連れてクリニックに来てほしい。 2019年にはお父さんとラグビーワールドカップの話で盛り上がったこともあった。こういう話題になると、男親との方が話が弾んだりする。 うちにもまだ大学生の子がいて、まだまだぼくのサポートを必要としている。ぼくの子育てはまだ完了していない。世のお父さんたち、お互いにがんばろうではないか。 もっともっと会話をしよう。それがぼくから患者家族へのメッセージである。 ※本稿は、『開業医の正体――患者、看護師、お金のすべて』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです
松永正訓
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