アップセルから「解約抑止」という目標の変換。継続率99%を誇るカスタマーサクセスができるまで|株式会社カオナビ
「カオナビキャンパス」は、ツールの活用方法に限らず、タレントマネジメントの始め方から具体的な実践方法までを、人事担当者がオンライン・オフラインで大学のように学び合える場となっている。オンラインでの学び合いを加速させるユーザー限定サイトには、導入企業の8割以上が登録しているという。 とはいえ、コミュニティづくりも、国内のBtoB SaaSのなかでほとんど前例がないなかでの挑戦だった。 「当時、ユーザーコミュニティというものは存在するものの、BtoBのSaaSでやっているところは国内であまりないという状態でした。BtoCであれば個人の意思や思いだけで動くことができると思うのですが、BtoBという性質上、会社員としての力学が働きますよね。コミュニティに参加しても企業として金銭的なメリットはないですし、目に見える成果を得られるわけではないなか、コミュニティ内の活性化には難しさを感じました。 そのため最初は、幅広いコンテンツが閲覧できるユーザーさま限定サイトを立ち上げ、コアとなるユーザーさまを巻き込む施策から始めました。そのコアとなるユーザーさまを中心としてコミュニティの輪を広げていくイメージです。 その結果、今ではユーザーさまが能動的に企画して働きかけてくれる場面も増えていきましたね。以前は我々が企画・主催をしてユーザーさまに参加いただくケースが多かったのですが、現在は、ユーザーさま自ら企画し、ほかのユーザーさまを巻き込むケースも増えています。人事としてのキャリアをどうしていくのかといった、サービスとは直接関係のないテーマでセミナーや交流会も実施しており、ユーザーさまの満足度も高く、コミュニティ内の活性化を感じています」
ツールの機能差がなくなるなか、導入後の付加価値や体験が差別化要素に
これまで前例のない取り組みに挑戦し、実現してきたカオナビのカスタマーサクセス。最後に、今後どのようなことに挑戦していきたいのか聞いた。 「ツール自体の機能の差は今後より一層なくなっていくことが予想されるため、ツール導入後にどういった付加価値や体験を提供できるかが、差別化要素になっていくと思っています。ツールを提供する側は、機能自体を改善し、より使いやすいものにしていくのが大前提です。加えて、人事でもあるユーザーさまが解決したい課題に向き合いながら、ツールだけじゃない解決手段まで届けることが、結果としてカオナビの競争優位性につながると考えています。今回お話した内容で言うと、例えばコミュニティなどはツール以外の解決手段ですよね。とはいえ、ユーザーさまの課題解決につながるのであれば、手段にこだわりはありません」 同社のパーパスには「“はたらく”にテクノロジーを実装し個の力から社会の仕様を変える」とある。つまり、サービス自体は企業に対して提供しているものの、カオナビが目指すのは社員個人が個性・才能を発揮し、個の力から社会を変えることだ。対企業だけでなく、対個人に立脚する要素も強いと言える。BtoBサービスでありながらも、ユーザー自身が自ら企画し、ほかのユーザーを巻き込む動きが生まれていたり、人事個人のキャリアにスポットをあてたテーマを扱うことで高い満足度を得たりできているのは、こうしたカオナビが目指す世界観にユーザーが共感しているからとも言えそうだ。BtoBサービスはどうしても対企業の視点になることが多いが、カオナビの取り組みが示すように対個人にも目を向けてみると、もっと違ったアプローチが見えてくるかもしれない。
【プロフィール】 柏崎 直人 カスタマーエンゲージメント本部長 人材業界にて採用支援、組織活性化支援等に従事。2018年に当社に入社し、カスタマーサクセスの立ち上げを経験、その後ユーザーコミュニティなどの各種施策や仕組み構築を実施する。2024年、カスタマーエンゲージメント部門責任者に就任。