貨物の約14%が運べなくなり生鮮物が都市部に届かないおそれも 全国有数の農畜産県・鹿児島から見た2024年問題
トラック運転手の残業時間の上限規制に伴って生じる、いわゆる「2024年問題」が鹿児島の物流にも影響している。今後、鹿児島の農畜産物が行き場を失うおそれもあり、値上げの波となって経済や私たちの生活に直撃するおそれもある。 【画像で見る】船便を使うことで運転手の休憩時間を確保
“過剰サービス”が長時間労働の温床に
これまで事実上、上限がなかったトラック運転手の残業時間。 しかし働き方改革関連法に基づき、2024年4月1日から年960時間までと規制された。これにより生じる物流への影響を意味するのが「2024年問題」だ。 残業時間に上限が設定されたとはいえ、960時間という数字は他業種と比べかなり長い印象がある。トラック運転手の残業時間が長いのは、運送会社に仕事を回す荷主との関係による影響が大きかったという。 125台のトラックとほぼ同じ数の運転手を抱える、鹿児島の大手運送会社セイコー運輸を訪ねた。鹿児島県トラック協会の会長も務める鳥部敏雄社長は、運転手の残業時間の増大は「34年前の規制緩和がきっかけだった」と振り返る。 鳥部社長によると、平成2年(1990年)に施行された物流二法によって規制緩和が進み、当時4万5000社あった運送業者が6万社まで増えて過当競争になったという。運送業界が仕事を確保するために、荷主に対して過剰サービスに入ったのが、現在の長時間労働につながっているというのだ。 鳥部社長が語る過剰サービスとは、「荷待ち」と呼ばれる長時間の待機や、下ろした荷物の「ラベル貼り」、商品を店内に並べる「棚入れ」など、本来の運送業務とは関係のないサービスを指す。 運送会社はこの過剰サービスをやめるため、荷主と協議するようになった。しかし、荷主側にとって今まで当然だったことが変わることは抵抗が生まれるものだ。それでも鳥部社長は「それを元の形に戻すことが我々のすべきこと」と語る。 運送会社のサービス争い激化の中で生まれていった 運転手の長時間労働を減らすための取り組みとしてまず挙げられるのが、「過剰サービスの停止」だ。 運送会社と荷主が協議する一方で、国土交通省も対策に乗り出している。 国土交通省では2023年7月、職員162人から成る「トラックGメン」を設置して過剰サービスへの監視を強化。悪質なケースでは社名公表も行うことにしている。