テザー、中南米農業大手に1億ドル投資はトークン化事業戦略の一環か
時価総額1180億ドル(約16.7兆円、1ドル=142円換算)のステーブルコインであるテザー(USDT)を発行するテザー(Tether)社と、直近のラテンアメリカの農業大手に対する投資は、一見するとあまり共通点がないかもしれないが、両社は現実資産(RWA)のトークン化という野心を共有している。 8月に米証券取引委員会(SEC)へ提出された書類によると、ステーブルコイン大手の同社は、ニューヨーク証券取引所に上場しているルクセンブルク拠点の農業コングロマリット、アデコアグロ(Adecoagro SA)の株式9.8%を取得するために1億ドル(約142億円)を投資した。 アデコアグロのウェブサイトによると、同社はアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイに広がる21万3500ヘクタールの農地と工業施設を所有しており、農作物、米、乳製品、サトウキビの分野で事業を展開している。同社は280万トンの農産物と100万メガワットを超える再生可能エネルギーを生産している。
農作物をデジタル資産に変換する
アデコアルゴは、農産物のトークン化に注力するアルゼンチン拠点の企業、アグロトークン(Agrotoken)の少数株も保有している。アデコアグロの年次統合報告書によると、同社は2021年にこのスタートアップに投資している。アグロトークンは「穀物をデジタル資産に変換し、物資、サービス、その他の資産を保管または交換することを目指している」という。 アグロトークンのCEO兼共同創業者であるエドゥアルド・ノビロ・アストラーダ(Eduardo Novillo Astrada)氏は、リンクトイン(LinkedIn)に投稿した動画で、アデコアグロはアグロトークンの生みの親の一人であり、このスタートアップの株式10%を所有していると述べた。 「アデコアグロのCEOであるマリアーノ・ボッシュ(Mariano Bosch)氏は、常に私たちをサポートしてくれている」とノビロ・アストラーダ氏は書いている。「彼は素晴らしいビジョンを持っており、彼がやりたいのは土地のトークン化だと理解していた。私たちもアデコアグロや他の主要な農業パートナーと協力して取り組んでいる。」 アグロトークンは、250以上の業者および40以上の穀物保有者と7000万ドル(約99億円)のトークン化取引を行ったと主張している。さらに、1000戸以上の農家との間で、23万トンをトークン化した。 ノビロ・アストラーダ氏によると、アグロトークンはボッシュ氏と共同で、生産者が穀物で表された独自の通貨を持つことができる3つのステーブルコイン、SOYA、CORA、WHEAの開発を開始した。「これはブロックチェーン技術と農業ビジネスのつながりを明確に示すメッセージだ」と同氏は述べた。 アグロトークンはすでにサンタンデール(Santander)などの企業と協力しており、2022年にスペイン銀行大手の同行と提携してアルゼンチンでトークン化された商品を担保にしたローンを開始している。 「テザーは、土地が重要な資産クラスであり、ビットコイン(BTC)と金に対する既存の投資を補完するものだと捉えている」と同社広報担当者はCoinDeskへのメールで述べた。 「土地は本来的に希少なものであり、長期の利回りを提供し、歴史的に地政学的不安定期における安全地帯としての役割を果たしてきた。」