「親のおひとりさま期」は自分事として捉える契機になる!?人生100年時代におひとりさま期をどう生き抜くか
今、単身世帯が急増しています。総務省が発表しているデータによれば、2040年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されており、特に65歳以上の単独世帯数の増加が顕著です。家族と一緒に暮らしていても、子どもが独立したり、配偶者と離別/死別したり、多くの人が「おひとりさま」になる時代なのです。 そこで、「親のおひとりさま期」と、やがて訪れる「ワタシのおひとりさま期」にスポットを当て、必要な備えや情報について考えます。 前編では、「親のおひとりさま期」に直面した3人のケースをご紹介しましょう。
ケース1 母の認知症と遠距離介護の限界
病院勤務(事務職)のT・Mさん(50代、東京都在住、夫と二人暮らし)。父は5年前に死亡、現在、80代のお母さんが、「おひとりさま」として愛媛県で暮らしています。 「兵庫県に暮らす妹と二人で、お互いにスケジュールを調整しながら母の介護に通っています。だんだん足腰が弱ってきたことに加え、認知症の症状も出てきたので、母一人では買い物や洗濯などの家事が難しくなってきました」 今は、自宅での介護サービスと週2回のデイサービスを利用し、近所の人の手も借りながら、何とか暮らしを維持していますが、近いうちに限界が来るだろうと予想しているTさん。現在、施設を探しているそうです。 「母の年金と貯金で入れる『終の棲家』を見つけ、手続きをして、実家じまいをして。これからやることがたくさんあるのに、遠距離介護では、思うようにコトが進まないのが悩みです」 母は自分と妹がサポートするとして、子どものいない自分の場合は誰が手続きをしてくれるんだろう……と思うと不安に駆られるそうです。 「平均寿命からいえば、5歳年上の夫が先に旅立つだろうし、私が80代になれば、2歳年下の妹も年をとっているわけだし……。母の介護をしながら、自分の『終活』を意識するようになりました」
ケース2 独身の伯母の葬儀を家族葬で済ませた後悔
高齢の母の代わりに、独身の伯母(愛知県)の葬式の手配したのは、N・Sさん(60代、愛知県在住、夫、息子(大学生)と3人暮らし) 「若い頃に離婚して独身だった伯母にとって、両親(Nさんの祖父母)が他界した後、うちの母が唯一の肉親でした。 その母も、もう80代半ば。10年前に夫(Nさんの父)が亡くなったときは、テキパキと指示していましたが、さすがにそのときより体力も気力も、判断力も落ちています。 伯母が急な脳梗塞で亡くなったとき、病院から『葬儀社は決まっていますか?』『どこへ運びますか』と聞かれても、オロオロするばかりでした」 酷な話ですが、病院で亡くなった場合、亡くなったらすぐに病院を出なくてはならないのが実情です。同じ県内に住むといっても、都市部に住むNさんには、郊外の葬儀社など見当もつきません。Nさんは、病院が紹介してくれた葬儀社に決めざるを得ませんでした。 「病院の指定葬儀社は、思っていたよりも費用がかかりました。父の場合は、生前に互助会に入っていたので、それほど割高だとは思いませんでしたが…」 こじんまりとした家族葬で伯母を見送ったものの、Nさんは今も後悔があると言います。 「妹を亡くしてショックだった母には、もっとやさしい言葉をかけるべきだったし、厳粛な気持ちで伯母を見送りたかったのですが、私自身、やるべきことが山積みで気持ちの余裕は全くありませんでした」 葬儀社を決め、セレモニーホールでの通夜と葬儀を行い、その支払いのため銀行へ行ったり、市役所に行ったり、慌ただしい毎日を送ったNさん。 そんなNさんに、さらに予想外の出来事が! 10日ほど経って、相続の手続き書類のために、伯母の家(母の実家)に行ったときのこと。隣近所の人々から声をかけられました。 「町内会の回覧板が回ってこなかったから、亡くなったことを知らなかった」「何十年も近所で暮らしてきたのだから、知らせてほしかった」「お通夜か葬儀に行って、お別れを言いたかった」と口々にお悔やみとも皮肉ともつかない言葉を浴びせられたのです。 そういえば、町内会の回覧板をお願いすることもなく、近所の人への挨拶もしていなかった、と気づいたNさん。 洋裁の請負仕事をしながら細々と暮らしていた伯母にも、近所の人や古くからの友人など、知らせてほしい人がいたかもしれない――。 伯母の親戚はうちだけだからと、安易に家族葬で済ませてしまったことを後悔したそうです。 「私が死んだら、知らせてほしい友人がいます。中には、息子が知らない人もいるはず。せめてリストアップだけでもしておかなければと思いました」