若者が飲みたくなる日本酒求めた杜氏が急逝 遺志継いだ学生たちが「割ってもおいしい酒」販売
京都府福知山市西小谷ケ丘、福知山公立大学の学生たちが、産学連携で取り組んできた「若者酒づくりプロジェクト」の商品第3弾が完成した。プロジェクト発案者で、若宮酒造=綾部市=の社長兼杜氏だった木内康雄さん(享年52)が、第3弾のための酒を仕込んだあとの今年3月、業務中の事故で急逝。学生たちは木内さんの遺志を継ぎ、販売開始までこぎつけた。 若者の日本酒離れが進む中、故・木内さんが、公立大の谷口知弘教授らに依頼し、プロジェクトが2021年に始動した。綾部高校農業科が酒米作り、公立大が商品企画、京都工芸繊維大学がパッケージデザインを担当。高校生と大学生が「若者が飲みたくなる日本酒」をコンセプトに商品開発に取り組み、22年春に第1弾、23年春に第2弾が完成した。 第3弾の商品企画は、公立大4年の佐藤大斗さん、岸田光生さん、平川静恭さん、植松思絵さんの4人が担当。木内さんに温かく見守られながらアイデアを出し合い、「最初はみんな初心者、割って飲んで好きになろう」を商品コンセプトにした。
■「責任は俺が取る」 木内さんの存在大きく
酒の仕込み、商品コンセプトづくり、ラベルデザインなどを終え、販売戦略を練り上げていこうとしていた矢先に、木内さんが不慮の事故で亡くなった。学生たちは現実を受け止められない時間を経て、木内さんの日本酒への熱い情熱を引き継ぎ、ラベル張り作業を行うなどして、7月中旬に販売を開始した。
木内さんの存在は大きかった。「日本酒を割るのは邪道と言われることがあるが、日本酒の自由度を高めてほしいんだ」と常々語り、「好きにやったらいい。責任は俺が取るから」と学生たちの背中を押した。その木内さんの思いは、第3弾のコンセプトの中に生きている。 商品名は、ロックンロールの「シェケナベイベー」から着想を得て、「SAKE na Baby~好きに割る 好きになる~」に決定。「みんなでワイワイ飲んでほしい」「日本酒の固定概念にとらわれずに、割って飲んでほしい」という願いを込める。 ラベルデザインは、京都工繊大4年の西垣翔仁さん=福知山高校卒=が、若者に手に取ってもらいやすいようにと作成。1950~60年代に流行したロカビリーで踊る女性をネオンサインでデザインした。 酒は香りが高く、味は濃いめで、まろやかな仕上がり。学生たちは、日本酒に苦手意識がある若者には、カクテルにしたり、ジュースや梅シロップなどで割ることを勧めていて、日本酒好きの人には「味が濃いので、そのままでもおいしいです。自分の好みの飲み方で楽しんでほしい」という。 特別純米原酒でアルコール度数は18度。価格は300ミリリットルで825円、720ミリリットルで1815円(いずれも税込み)。若宮酒造やあやべ特産館、佐々木酒店など綾部市内で店頭販売している。 公立大の佐藤さんは「木内さんには感謝の気持ちでいっぱいです。木内さんが生前仕込んだ最後のお酒になるので、恩返しの意味を含めて大ヒットさせたい。日本酒が好きな人から初心者の人まで、誰もが楽しめるお酒になっているので、ぜひ飲んでみてください」と話している。 10日からは、公立大生が企画して「日本酒チャレンジうぃ~くSAKE na AYABE」と題し、綾部市内のイタリアンカフェ・プント、宗右衛門珈琲高津店など6店舗で新酒を使ったカクテルや新酒に合う料理を提供する。18日まで。