「生き残った実感湧いた」吉野家の牛丼を30年間、毎年1月17日に食べる男性 避難所で初めて食べた炊き出しの味…感謝忘れず
翌年から欠かさず1月17日には吉野家へ
翌年から松村さんは、1月17日になると吉野家を訪れることが習慣になりました。訪れる店舗はJR兵庫駅店や、ここ数年は高速長田駅前にできた長田五番町店など。決まった店舗はありませんが、毎年欠かさずに足を運んでいます。 「大きな理由という感覚はなく、正月ムードが過ぎて震災何年という雰囲気になると、炊き出し時の牛丼の味を思い出して自然と足が向く感覚です。当時は撤去作業が進んで少しずつ変わっていくとはいえ、復興と呼ぶには程遠い瓦礫と焼け野原だらけの町で、せめて何か節目のようなものが欲しかったのかもしれません。ただ、東日本大震災以降は1月の阪神・淡路大震災の話題性が減ったことで、今まで無意識に食べに行ってたものが逆に意識するようになりました」 松村さんは今年の1月17日も吉野家を訪れる予定です。 「ささやかな自己満足としての感謝、震災前の華やかな神戸への哀愁、復興の進まない地元への諦めなど、いろいろな感情が入り混じります」
地震発生から30年、神戸への思いは
阪神・淡路大震災の発生から30年。神戸の街を見て感じることは。 「中心市街地は速やかに復興が進んだのと裏腹に、未だに震災復興が進んでいない地域があちこちにあります。被災地全てを助けられるわけではないとはいえ、復興失敗と言われる新長田周辺に比べてすら、高速長田駅周辺の震災復興状況の落差は残酷です」 大震災の経験者として伝えたいことは。 「防災対策や震災直後の支援など地震そのものに対するノウハウは次の災害に生かせますが、復興は地域ごとの歴史や成り立ちが大きく関わっています。地元民にしか分からない壁や溝が震災を機に別の形になって現れることも、震災復興の重要なポイントだと思います。三陸には三陸で地域ごとの苦悩があったでしょうし、これから能登でも同じことが起きていくと思います」 ◇ 松村さんは神戸市生まれ。交通遺産ライター、都市鑑賞家。著書に「走らなかった鉄道 未成線を追う」(神戸新聞総合出版センター)、「コープこうべ大図鑑」(自費出版)など。CBCテレビ「歩道・車道バラエティ 道との遭遇」にも出演。Xのアカウント名は「なな爺(LEVEL7G)」(@level_7g)。 (まいどなニュース・金井 かおる)
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