令和時代に輝くFC東京・久保建英の凄さの秘密が判明!
想定外の事態に直面したときに人間は衝撃を覚える。日本サッカー界を見渡してみれば、4年ぶりにJ1の舞台で戦う松本山雅FCで、開幕から左ウイングバックとして全9試合に先発フル出場している25歳の高橋諒も、直近のリーグ戦で自身が抱く常識を覆された一人だ。 「何なんですかね、あの上半身の柔らかさ、というのは……」 平成最後の一戦となった、4月28日のFC東京戦後の取材エリア。ポジション的にマッチアップすることが多かった相手の右サイドハーフ、17歳の久保建英に対して驚きとともに漏らした「柔らかさ」という言葉に、今シーズンの久保が大ブレークを遂げている秘密が凝縮されている。 高橋が度肝を抜かされたシーンは後半42分に訪れた。こぼれ球を拾ったFC東京のボランチ橋本拳人が最終ラインのDF森重真人へいったんボールを下げる。さらにDF渡辺剛にゆっくりとパスが回される間に、右タッチライン際にいた久保は左手によるゼスチャーでボールを要求していた。 そして、やや強めのパスが渡辺から斜め右前方へいた「15番」へと入る。絶対に前を向かせない、あわよくばボールを奪ってカウンターを仕掛けようと、久保がトラップする刹那に照準を定めた高橋がアプローチをかけ、猛然と距離を詰めていった直後だった。 「(相手は)食いついてくる、と思っていたので」 高橋の気配を察知し、次に起こしてくる行動を読み切っていた久保が、ダイレクトでパスに左足を合わせる。ボールをポンと前方へ、高橋の頭越しに大きく浮かせて、自らはそのまま右タッチライン際をスプリント。高橋の脇をすり抜けて、ボールの落下点へ向けて加速していく。 「ただ、何となくわかりました。(自分の)上を狙ってくる、というのが」 とっさの判断で久保の意図に気がつき、急停止から体を反転させた高橋も追走を開始。久保の左側から右手と体をねじ込んで、勢いを食い止めようとする。久保も負けじと左手を伸ばして、高橋がかけてきたプレッシャーをはねのけようとしたその瞬間だった。 「並んだときに指から入ってくるというか。体を止めにいっても前に入られるというか。独特なものを感じました」 久保の左手が自身の前面へ入り込み、次いで体を巧みに入れ込まれたときの感覚を、高橋は「にゅるん」と表現した。冒頭で高橋のコメントとして記した「上半身の柔らかさ」が、この擬態語に込められている。どんなに力を入れても吸収される、あるいは力が分散させられてしまうことを意味していた。