再稼働、安全最優先で 福島県民「福島の事故教訓に」 東北電力 女川原発2号機
東北電力女川原発2号機が再稼働した29日、東京電力福島第1原発事故で甚大な被害を受けた福島県民は安全最優先の運転を求めた。万が一、事故が起きれば隣県にもさまざまな影響が及ぶ。「復興に向けた努力が台無しになるような事態は絶対に避けてもらいたい」と安全管理体制を注視する。原発が生み出す電気が福島県に供給されることになり、自分事として再稼働を捉える人も。「福島第1原発事故の教訓を生かしてほしい」と注文した。 ■管理体制を注視 相馬双葉漁協組合長を務める相馬市の今野智光さん(66)は「原発事故の経験を生かし、十分な安全対策をしているはずだ。強い緊張感を持って稼働に当たってほしい」と語った。 今秋はタチウオが好調で、今後はトラフグやマダコの水揚げが期待できる。ただ魚種によっては原発事故の風評が残る。第1原発の廃炉作業のトラブルは「協力会社任せの東電の姿勢に問題がある」と推し量る。「女川原発では電力会社が先頭に立ち、絶対にトラブルを出さないようにしてほしい」と訴えた。
原発事故の影響は長期にわたる。南相馬市小高区で会社員の傍ら農業を営んでいた南原正大さん(72)は事故に伴い県内外を転々と避難した後、2020(令和2)年に農業法人を設立して営農を再開。若い世代の帰還が進まず、働き手の確保に苦心する日々を送る。「日本で二度と事故が起きないよう社員教育を徹底し、安全対策を講じてもらいたい」と強調した。 「安全に絶対はない」。浪江町津島地区から郡山市に避難した無職末永孝二さん(69)は言い切る。津島地区は原発事故の1次避難所となり、周辺は多くの車であふれ渋滞となった。「女川原発で事故が起きた場合に住民がきちんと避難できるのか。実現可能な避難計画を作らなければならない」と語った。 ■電力の安定供給「地方の活力へ」 原発再稼働は、大量の電力を消費する工場や企業の誘致につながるとの見方もある。矢祭町のNPO法人で地域活性化の活動に取り組む70代男性は「新たな雇用を生み、将来的に地方の活力になるという捉え方もできるのではないか」と話した。
将来的に電気料金が値下がりする可能性がある。県南地方の宿泊施設では、年間の燃料費4500万円~5千万円程度のうち電気料金は約2千万円に上り、経営を圧迫している。総支配人の男性は「苦しい経営が続いている。(電気料金が抑えられれば)事業者としては助かる」と語った。