「義母から執拗ないじめ」日本初のお天気お姉さん・今井登茂子(87)の苦悩と原動力「社会でも理不尽な思いを経験し」
── いったいなにがあったのですか? 今井さん:NHKが私のことを自社のアナウンサーだと勘違いして、会見での私の数十秒間のインタビューをおそらくNHKで放送したんですね。マスコミ間のルールでこれはタブー。どうやら私が報道協定のルールに反してインタビューしていたらしいのですが、新人だったこともあり、マスコミのルールをよくわかっていませんでした。当然、上司はカンカン。褒められると思っていたのに大目玉を食らい、悔しくてトイレで泣きました。
ただ、反省はしたけれど後悔はしていません。もし私が勉強のためにあの日あの場に行かなければ、貴重な瞬間が世に残らなかったわけですから。後に、『放送メディア入門』(社会評論社)という本にも、女性スポーツアナウンサーの第一号として、私の名前が載っていましたしね。 ── ポジティブな考え方ですね。 今井さん:ただ、こういう性格なので、「あいつは生意気だ」と、影で散々悪口を言われたり、足を引っ張ろうとする人たちも少なからずいました。「あいつとデキてる」とか、根も葉もないウワサを立てられて困り果て、誤解を解くために、部長会議に乗り込んで説明したこともありました。嫉妬って女の人のものかと思っていたけれど、そんなことはない。男性の嫉妬ってこんなに凄まじいんだなと知りました。いまでは考えられないようなセクハラやパワハラが横行していた時代ですから、理不尽な思いもたくさん経験しましたが、いま思えば、そうした悔しさもすべて前に進むエネルギーになっていた気がします。
PROFILE 今井登茂子さん 1937年、東京生まれ。立教大学文学部卒業。1959年、TBS入社。音楽、情報、報道、スポーツなど、多岐にわたる番組を担当。 初代お天気お姉さんとして人気を集め、視聴率40%を記録。1988年、放送貢献者に贈られる「ゴールデンマイク賞」を受賞。1987年に人材教育「とも子塾」を設立。「会話力は人間力」という明快なテーマを軸に、実践的かつ科学的な理論に裏付けられたメソッドを構築。受講者はのべ3万人を超えている。
取材・文/西尾英子 画像提供/今井登茂子
西尾英子