働き盛りの40代に多い「男性更年期障害」 初診から治療までの流れを解説
男性の更年期障害はどのように診断するのか?治療の流れ
編集部: 初診ではどのようなことをするのですか? 松本先生: まずは問診票に回答してもらい、更年期障害の可能性があるかどうかを判断します。 たとえば、「どのくらい仕事に差し障りがあるか」「ほてりや多汗の症状はあるか」「EDはあるか」「性機能障害が低下していないか」など、まんべんなく話を聞いて、症状の重症度を推測します。男性の更年期障害はうつ病と似た症状が現れることがあります。 そのため診断ではうつ病と鑑別するため、精神的な症状についても詳しく確認します。 編集部: そのほか、間違われやすい病気はありますか? 松本先生: 睡眠時無呼吸症候群と似た症状が出現することもあります。たとえば、日中の集中力がなくなる、仕事のパフォーマンスが下がるといったことは、睡眠時無呼吸症候群でも見られる症状です。その場合には、睡眠時無呼吸症候群の検査を行います。 編集部: それらの検査により、ほかの疾患の可能性が排除されたらどうするのですか? 松本先生: 更年期障害であることが疑われる場合には、血液検査を行い、ホルモンの値を確認します。 編集部: 血液検査では、どのようにして診断されるのですか? 松本先生: テストステロンの値を測定し、ガイドラインに沿って診断します。ただし、内分泌系の疾患の一部は、テストステロンの数値が低下するものもあるので、それらとの鑑別も重要になります。
男性更年期障害と診断されたら、どのように治療するのか?
編集部: 男性更年期障害と診断されたら、どのような治療をするのですか? 松本先生: 症状によって治療法が異なります。軽度の場合には、漢方薬やED治療薬などで症状が改善することもあります。また軽度の場合には生活習慣の改善で、症状の軽減が期待できることがあります。 編集部: 生活習慣ではどのようなことに気をつければ良いのですか? 松本先生: 運動で筋肉に刺激を与えると、テストステロンの分泌量が増加します。筋トレや中強度の有酸素運動がお勧めです。 そのほか、ストレスはテストステロンを減少させる大敵になるので、ストレスを溜めないことも大切です。また、質の良い睡眠を確保することも、テストステロンの減少を防ぐためには重要になります。 編集部: それでも治らない場合には? 松本先生: テストステロンの数値が低く、症状が強い場合にはホルモン補充療法を行います。ホルモン補充療法にはさまざまな方法がありますが、テストステロン製剤を2~4週間に1回、腕やお尻の筋肉に注射する治療法は、患者の年齢によって健康保険が適用になります。 編集部: ホルモン補充療法にリスクはありますか? 松本先生: 長期に渡ってホルモン補充療法を行うと、男性不妊が起きる恐れがあります。投与頻度、中止時期などは医師と相談しながら決めてください。また、場合によっては多血症などの副作用を引き起こすこともあるので注意が必要です。 編集部: リスクもあるのですね。 松本先生: 無治療の睡眠時無呼吸症候群の人がホルモン補充療法を行うと、症状が悪化する場合があります。 ただし、ホルモン補充療法は生涯、続けなければならないものではなく、生活環境やストレス環境が改善して症状が軽減した人は、中断することもできます。医師と相談しながら、治療スケジュールを立てることをお勧めします。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 松本先生: 男性の更年期障害は、働き盛りの人に多く発症する疾患ですが、意外と無治療の人が多く、ひとりで悩んでいるケースも少なくありません。女性の更年期障害に比べ、男性のものは認知度が低く、そのまま放置されているケースも多いのです。 場合によっては、奥さんに連れられて受診するケースもあります。本人で自覚することが難しいため、周囲の人たちが受診を促すことも大切。 40代以降の男性で閉じこもりがちになったり、運動や外出の意欲がなくなったりした人がいれば、受診を勧めてあげても良いでしょう。
【この記事の監修医師】 松本 昌和 先生(みらいメディカルクリニックグループ) 東海大学医学部医学科卒業、順天堂大学大学院医学研究科腎臓内科学講座修了。順天堂大学医学部腎臓内科学講座非常勤助教、医学博士。現在、みらいメディカルクリニックグループ代表。「内科らしい内科」を目指し、順天堂大学医学部附属順天堂医院にて研修後、同院の腎・高血圧内科に入局、腎疾患と透析医療に当たる。その後、有隣厚生会 富士病院、御徒町腎クリニックなどを経て現職。大学付属病院で勤務していた経験を生かし、大病院と町医者がそれぞれの立場や役割を担うことを重んじ、常に患者の側にたった高品質の診療を心がける。
Medical DOC