高校統合で「工業科軽視」する普通科教員に不信感 進学指導に過度な干渉、生徒の可能性潰す恐れ
生徒の可能性を閉じかねない指導に、退職後も心残り
「工業科の生徒は、高校に入学して初めて工業の専門科目を学びます。全員が同じスタートラインに立ち、さまざまな専門科目に触れながら、それぞれ好きなことや得意なことを見つけていく様子を見るのはすごく嬉しかった。 うちには、工業に興味があって大学まで待てず、少しでも早く学びたい生徒が多くいました。もしくは、普通科の教科が苦手で勉強は嫌いだけど高校に通いたい、という生徒も当然来ていいはずの場所でした。 偏った進路指導で生徒の主体性をないがしろにした普通科教員たちの姿勢には、納得がいきません。彼らなりの老婆心だったのか、はたまた進学実績のためか知りませんが、生徒の可能性を閉じかねない指導だと思います。あの学校での勤務には限界を感じていましたが、結局どうすることもできなかったことについてはやりきれない思いです。今まで工業科の生徒たちにもらってきたものを、恩返しの形でこれからの生徒たちに与えてあげられなかったことが、今でも心残りです」 「教員の仕事が誇りだった」と唇をかみながらも、工業の分野を志す生徒への思いは、今でも心の中にある。 もしかしたら、普通科教員にも考えや言い分があったのかもしれない。しかし、いずれにしても木村さんの体験は、複数の学科を擁する高校の課題を浮き彫りにしているのではないだろうか。 教育の本質は、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出すことにほかならない。工業科の学びの重要性を正しく認識し、普通科と工業科の共存が生徒にとって最良の環境となるよう、組織全体のコンセンサスをとることが重要ではなかったのか。 (文:末吉陽子、注記のない写真: m.i /PIXTA) 本連載「教員のリアル」では、学校現場の経験を語っていただける方を募集しております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームからご記入ください。
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