自作キーボードの聖地、遊舎工房に行ってみたら、そこは沼だった(小寺信良)
もういい加減にしろよと読者から怒られかねないのだが、まだまだキーボードの話である。 キーボードキット一式を購入(写真) KeychronのK11 Proを購入し、散々いじくり回していたわけだが、まあさすがに自作までは時間ないし、キーボード改造もここまでかなと思っていた。ところが先日、PFUのHHKB Studioのお話を聞く機会があり、1995年当時の秋葉原の話などが出て、懐かしく思い出した。この記事はまもなくITmedia MONOistに掲載されると思うので、お楽しみにしていただきたい。 そのインタビューの中で、秋葉原のキーボード専門店「遊舎工房」の話が出て、そういえばまだ一度も行ったことないなと気づいた。だいたいこうした秋葉原の専門店は、沼度が高い。気難しそうな店員と常連がダベっていて、一見さんお断わり的な、素人が質問すると店員がめんどくさそうに対応するみたいな、昔ながらのアキバのニッチPCパーツ屋の気配がする。昔のアキバはそんな店ばかりだった。 なんとなくうっかり近づいたら大変な目に合いそうな気はしていたのだが、先週東京に出張する機会があったので、せっかくだから覗くだけ覗いてみよう、ダルい店だったらすぐ撤退、という気持ちで赴いた。
これが遊舎工房だ!
遊舎工房は秋葉原とはいえ、少し北側に外れた場所にある。アキバは昔からニッチな店ほど北側の末広町近辺に展開するという法則があり、90年代はMac専門店、2000年代はPDA専門店などが展開されたものである。 よくある雑居ビルの3階で、狭い小汚い階段を上るか、体臭に満ちたエレベーターで上るパターンを想像していたのだが、店舗は1階で拍子抜けした。 店内はそれほど広くなく、売り場面積は10畳ぐらいだろうか。日曜日だというのに、あるいは日曜日だからか結構お客さんが入っており、常時10人以上はウロウロしている。2割ぐらいは外国人で、わざわざ地図で調べてやってきたのだろう。店内には各種スイッチの打ち比べマシンが置いてあり、熱心にスイッチのタッチを確かめてはメモを取っていた。 意外に女性客がそこそこあり、やはり自分に合うキーボード探しは男女関係ないのかなとも思われた。 自作キーボードの販売形式は、基板セットである。これに個数分のスイッチとキーキャップを買い、組み立てることになる。とは言え基板だけ見せられてもなんのこっちゃわからないので、店内はサンプルとして組み立てられた見本が展示されている。これで実際に打ってみて、手の馴染みなどが確認できる。一部ではあるが、お店側で組み立てた完成品も買うことができる。 メカニカルキーボードというと、米国ではほとんどがゲーミング用途だが、日本の自作はそちら方向の傾向は薄いように思える。自作は文章を書く、しかもそこそこ長文を書くのにダルくないもの、という方向なのだろうと思われる。 というのも、自作のトレンドは今や半数以上が左右セパレート型だ。大型機はなく、極限まで少ないキーとフットプリントでやれるか、みたいなところの競争になってきている。またトラックボールと一体化したモデルも出始めており、これは今後トレンドになっていくのかもしれない。 店員さんの接客の様子を観察すると、忙しい店内にも関わらず、自作初心者にも非常に丁寧に接客しているようだ。昔のアキバの専門店とはずいぶん様相が違う。これは人気店になるはずだ。