「従業員の愛着が薄い会社」が勘違いしていること、従業員エンゲージメントが向上しない理由
■社員の「仕事観」を確認するとどうなるか A君のような仕事観を持っている社員が多いと、会社がさまざまな施策を講じても、従業員エンゲージメントは向上しません。また、そもそも自分の仕事観を持っていない社員が多いという実態もあります。 仕事に対するマインドを建設的にセットし、社員の仕事観を確認していくことが、エンゲージメント向上の土台になっていきます。例えば、離職率が10%台と人材定着に苦労していたある設備工事業の会社は、こうした取り組みを行った結果、離職率1%台まで改善できました。
コロナ禍以降、経営・組織・人事といったカテゴリーでよく使われるようになったキーワードに、「パーパス」という言葉があります。日本語の直訳では、「存在意義」という意味ですが、理念やミッションという言葉が近いでしょう。 エンゲージメントを考えるうえでも、パーパスの存在は根幹となる部分だといえます。従業員は会社という船に乗り込み、航海をすることになります。その船(会社)がどんな理由で、どんな目的地を目指して航海を進めていくのか。そのために大切な価値観や、船員(従業員)に必要な行動は何なのか? これらが明確に示され、浸透させることができないと、エンゲージメントは向上しません。
エンゲージメント向上に必要不可欠なもう1つの土台は、パーパスの浸透です。それを検証するためのものとして、弊社のエンゲージメント調査があります。過去16年間の調査結果を分析すると、スコアが高い上位会社には、ある共通する特性があるのです。それは、パーパスの浸透度が高い会社ほど、比例してエンゲージメントも高いということです。 ■パーパスが浸透しているとは、どんな状態か? それでは、パーパスが浸透しているとは、どのような状態を指すのでしょうか?
① 知っている 従業員が会社のパーパスを知っている、暗記している。 ② 理解している 従業員が会社のパーパスの意味合いや背景を理解している。 ③ 行動につなげようとしている 従業員が会社のパーパス体系に沿って、仕事をしようとしている。 答えは①ではなく、②でもまだ不十分で、③の状態を指します。エンゲージメントとは、会社への愛着心や貢献心、また仕事への熱意を持たせることです。そのためには、自社のパーパスへの理解や共感がないと雲をつかむような話になってしまいます。
パーパスを浸透させるための最初の一歩は、採用活動にあります。ここで休みや給与といった労働条件や福利厚生の説明ばかりに終始しているようであれば、エンゲージメントは上がりません。採用の段階からパーパスや価値観・行動指針といった、その会社が最も大切にしている理念の説明を熱く行う必要があるのです。 その内容に理解・共感・納得した人材を採用することができれば、根っこの部分でつながった人材を採用することができますので、入社後のミスマッチも減り、エンゲージメント向上も容易になります。
志田 貴史 :ヒューマンブレークスルー代表