食堂経営からスキー場経営へ スノーリゾート界の風雲児 ー株式会社マックアース
一ノ本氏によれば、当時は、まだバブルの残り香が漂っている頃で、世の中の風潮として高単価でいい宿を作ることがステータスであり、一般客がまだ多く詰めかけていたこともあり、学校相手というのは異端児扱いだったようだ。「だったらボクは逆をいこうと。より学校さんを泊めるぞって考えたんです」。 あまのじゃくな性格なのか?いや、そうではない。そこには、したたかな計算があった。「確かに宿泊の単価は低いんですけど、一般のお客様は宿泊料だけ。でも学校さんは100%道具のレンタルが出る。レンタルウェアも、平成5年ぐらいから自社でやるようにして、スキースクールも始めた。そうするとトータルの売り上げは、学校さんに泊まってもらった方が上がる。また一部屋の人数が一般のお客様よりたくさん入ってもらえるので、坪売り上げは学校さんを泊めた方が倍くらいになるということに気づいたんですよ」。 「客単価」と「坪売り上げ」。そもそものルーツが食堂経営だったことが、多くの宿舎経営者が持つ「客単価」ではなく「坪売り上げ」の概念を一ノ本氏に植え付けていた。そして「坪売り上げを考えたら、学校さんの方がいいだろうなというのと、そこに特化して突き詰めることで、出せるコンテンツの数が増える」というところに考えが至った。 ■来てもらう“目的”を作る 様々な体験活動のプログラムを用意した。よそがやっていないようなこと…たとえば、プロジェクトアドペンチャーという、アメリカ発の森の中のアスレチックゲームを西日本で初めて導入するなどした。こういうことをやったらどうですか」と提案をし、それを取り入れてもらった。「要は『ここに来なきゃいけない必然性をいかに作るか』って話ですね」。 一ノ本氏の言うところの「温泉ない、行き止まり、道も悪い、観光資源ない。ただ自然だけはある」というのを逆手に取って、「来てもらう用事を作る。それが自然体験だったり、スキーだったり。アクティビティが目的で、それに付随した宿泊施設。そういう売り方しかできないんじゃないのかなと思ったので、そこに力を入れようと。ウチのスタッフはみんな野外活動とかキャンプ系とかの資格いっぱい持ってますもん。みんな指導できますよ」と方向性を明確にした。宿に足を運ばせる“目的”のプランを何万通りと作った結果、バブル崩壊の煽りを一切受けなかった。