紫式部が感じ取った「中宮・彰子」が女房たちに抱いた葛藤。要望を話しても女房たちに響かないモヤモヤ
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は紫式部が見た、中宮や女房たちの素顔について解説します。 著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。 【写真】同僚の女房たちをあれこれ批評する紫式部。写真は紫式部邸宅跡地に建つ、廬山寺 ■同僚の女房たちの素顔を記す 『紫式部日記』の中には、一条天皇の中宮・彰子(藤原道長の娘)に仕えた紫式部が、同僚たちのさまざまな素顔を記している箇所があります。 紫式部も同僚のことを書くのは、少し遠慮があったようで、最初に「女房たちの姿形について、お話ししたら、それはおしゃべりがすぎるでしょうか」と書いています。
また、執筆に際しては、紫式部なりの基準があったようで、「これはちょっと……」と思われる人(つまり、人の欠点)については「触れないでおく」とも記しています。 そのうえで、まず紫式部が取り上げたのが、藤原遠度(北野の三位)の娘・宰相の君です。 「ふっくらとしていて、とても整った容姿。利発そうな顔立ちで、初対面の頃から時を経るにしたがって、とても印象がよくなっている。上品で洗練されていて、口元には高貴な雰囲気とともに、艶っぽい雰囲気も漂っている。立ち居振る舞いも、人目をひく美しさで、とても華やかだ。性格もたいそうよく、可愛らしさと品のよさが備わっている」
この一文を読むと、絶賛といった感じです。 紫式部は、小少将の君(源時通の娘)についても「上品で優雅。シダレヤナギのような風情。姿形は可愛らしく、物腰は奥ゆかしい。性格は控えめだ。人付き合いをとても恥ずかしがる。こちらが見ていられないほど、子どもっぽい。もし意地悪な人がいて、悪口を言われたりしたら、くよくよ悩み込んでしまうような、か弱くどうしようもないところがあるのが、とても気にかかる」と評しています。
小少将の君を、紫式部は自分の妹のような、いや、もしかしたら、我が子のように見ていたのかもしれません。 中宮に仕える女房の中で、紫式部がひときわ「綺麗」だと思っていたのが、小大輔や源式部(源重文の娘)でした。 小大輔は、髪が美しく、とても豊かで、背丈より一尺以上長かったとのこと。しかし、「今は抜けて分量が少なくなっていた」ようです。これは、少し余計な記載でしょうか。紫式部曰く「外見で直すところはない」そうです。