阪神の新外国人マルテに掛布氏背番号「31」で賛否
お客さん相手のプロ球団にとって伝統や歴史は非常に重要な要素である、メジャーリーグでは、先駆者に敬意を払い、伝統を重んじ、盛んにそういうイベントを行い、今のファンに伝統を伝えるという啓蒙活動も怠らない。そもそも永久欠番の発想は、メジャーから来たもので、ヤンキースなどは、永久欠番を多発しすぎて、もう一桁番号どころか、主だった背番号が不足するという事態にまで発展している。 阪神の永久欠番は3人である。“物干し竿バット”藤村富美男氏の「10」、“ザトベック投法”で名球界入りした村山実氏の「11」、“牛若丸“の異名をとった名ショート、吉田義男氏の「23」の3つだけで、吉田氏のそれは1987年の監督退任時に永久欠番となったもの。以来、31年間、永久欠番は出ていない。対して広島は、メジャーから広島に凱旋帰国し、日米通算200勝と、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した黒田博樹氏の「15」を引退時に永久欠番にしている。 長い時間が伝統の継承や先人へのリスペクトという球団経営の根源にもっておかねばならない部分を阪神から風化させてしまったのかもしれない。金本監督の事実上の解任騒動の際に、その手法が問題になった揚塩社長も、現在、実務の責任者である谷本副社長も、球団の仕事をやるようになって日が浅い。ユニホーム組のプロパーがフロントの要職にない現在の阪神のフロント組織において、背番号という伝統の重みの再評価やミスタータイガースが背負った「31」を新外国人に渡すことによって起きるハレーションについての議論さえ行われなかったのだろう。 もう「掛布など過去の人」という考え方なのかもしれないが、藤原オーナーが新しく就任するなど、ガラっと球団の経営体制が変わった今こそ阪神タイガースの伝統というものを再認識しておくべきだったのではないか。甲子園に歴史館を置くことだけが伝統の継承ではない。そういうスピリットを経営の根幹に置いておくことが重要なのだ。 掛布氏以降の4選手がいずれも大活躍とはいかず「31の呪い」「31の呪縛」とファンが噂した悪しき歴史……。伝統のプレッシャーを感じる可能性が日本人よりも少ない外国人のマルテが振り払ってくれることを願うばかりだが、その検証は、また別の機会にTHE PAGEで行うことにしたい。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)