夫婦ゲンカでいつも悪いのはどっち? 子どもの心を傷つける親の「自分だけが正義」
どうすれば夫婦ゲンカをしないようになりますか?
A. 「夫も妻も、両方正しい」という真実に気がつけばケンカはなくなります 夫婦ゲンカに明け暮れていた時期、『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房)という本に出合いました。この本は私たち夫婦の座右の書です。読み終えたとき、私は自分が犯していた過ちに気づいて、がく然としました。 この本には、「人は、自分の箱に入っているとき、自分を正当化し、相手に非を押しつける」という意味のことが書かれています。私は、自分の小さな箱の中に入った状態で、自分を正当化し、妻を悪者に仕立て上げていたのです。 この本から得た最大の学びは、「自分も正しい。相手も正しい」という真実です。正義はいつでも、人の数だけあります。夫婦間においては、「夫の考えも正しいし、妻の考えも正しい」のです。 この考えを受け入れることで、世界の見え方が一変しました。どちらの正義も正しいのであれば、2人が納得する落としどころを探せばいいのです。勝ち負けを競うのではなく、「2人が一緒に勝つためにはどうすればいい?」と考えられるようになりました。 自分の小さな箱から出てみると、そもそも自分が掲げていた正義の正体が「思い込み」であることにも気づきました。たとえば、私は「子育てや家事は妻ががんばるもの」という思い込みを抱いていました。言うまでもなく、子育てや家事は妻だけのものではありません。 もっと言えば、「がんばる」という表現自体も思い込みと言えるでしょう。大事なのは「自分が入っている小さな箱」に気づくことです。気づくことができれば、脱出することもできます。
それでもやっぱりケンカをしてしまった場合、どうしたら仲直りできますか?
A. 日々、小さなケンカをして夫婦間の価値観のズレを確認し、受け入れておきましょう 「自分の小さな箱」から抜け出すことで、私と妻の関係に変化が生まれました。 最たる変化は、「会話量が増えた」ということです。お互いに正義をぶつけ合っていた時期は当然、会話らしい会話はありません。相手は敵ですので、簡単に気を許してはいけない、という本能が働いていたのかもしれません。 しかし、「自分も正しい。相手も正しい」ということがわかったために安心感が生まれたのでしょうか、その後は、お互いに自分の考えや気持ちを伝え合うことに恐れがなくなりました。 もちろん、会話量が増えれば、瞬間的に衝突したり、小さなケンカが起きたりすることもあります。しかし、この小さなケンカは、あってしかるべきものです。なぜなら、小さなケンカを通じて考えや価値観のズレを確認し、受け入れることができるからです。 小さなケンカを避けようとすると、取り返しのつかない大ゲンカを招きかねません。そういう意味では、ある日暴発する大きなケンカと、日々起きる小さなケンカは、その性質や意味合いがまったく異なります。前者が「正義」と「正義」の対決であるのに対し、後者は「お互いの考えや価値観のすり合わせ」です。 夫婦ゲンカの仲直りのコツは「謝り方」にあるのではありません。仲直り上手になりたいなら、暴発による大ゲンカを避けるべく、日々の小さなケンカを増やすことをオススメします。小さなケンカであれば「ごめん。さっきは自分の箱に入ってしまったよ」のひと言で、矛を収めることができるでしょう。
【著者】 山口拓朗 伝える力【話す・書く】研究所所長/山口拓朗ライティングサロン主宰 出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。著書はベストセラー書籍『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)ほか30冊。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。
山口拓朗(ライター&インタビュアー)