夫婦ゲンカでいつも悪いのはどっち? 子どもの心を傷つける親の「自分だけが正義」
やさしい性格の子どもを育てたいと思ったら、夫婦円満であることは大事です。しかし、作家の山口拓朗さんは夫婦関係の危機を乗り越えた経験から、むしろ夫婦間の小さなケンカはあったほうがいいと考えているそうです。山口さんのお話をご紹介します。 【マンガ】「悔しかったら稼いでみたら?」妻の頭に”離婚”の文字がよぎった瞬間 ※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年9月号から一部抜粋・編集したものです。
夫婦ゲンカ発生! 子どもは何を思う?
小さな子どもにとって、親は、自分の世界の一部です。いえ、まだ1人で何もできない子どもにとって、親の存在は「一部」どころか、「自分の世界そのもの」とも言えます。 夫婦が楽しく仲よく過ごしていると、子どもも楽しく満たされた気持ちになります。未就学児童にとって、自分と親は「一体」なのです。 親が夫婦ゲンカを始めたとき、子どもは、夫婦が互いにぶつけ合う「感情的な言葉」や「相手を責めるエネルギー」を敏感に察知し、自分の身体や心をもぎ取られたように感じます。自分を守ってくれていた安心・安全の世界が崩れていくような感覚。それは大人が思う以上につらいものです。 子どもは親のことを愛しています。愛の対象である親同士が責め合い、傷つけ合う姿は、子どもにとって悲しみ以外の何ものでもありません。中には夫婦ゲンカの原因が「自分にあるのでは?」と感じて自分を責めてしまう子もいます。これは精神衛生上、けっしていいこととは言えません。
そもそも、人はなぜ夫婦ゲンカをしてしまうのでしょうか?
A. お互いが「自分が正義だ」と思い込んでしまっているからです すべての夫婦ゲンカに共通する点があります。それは夫と妻の双方が「自分が正しくて相手が悪い」と思っている、ということです。「正義」対「正義」、これが夫婦ゲンカの正体です。 夫婦ゲンカをするとき、夫と妻はお互いに「正義は1つしかない。しかも、それは自分の側にある」と思い込んでいるのです。考えてみれば、国同士の戦争も「正義」対「正義」です。自国が善で、敵国が悪。でも敵国から見れば、相手が悪なのです。つまり、「正義」は1つではなく、国の数、いいえ人の数だけあるのです。 少し深掘りしてみましょう。 夫婦ゲンカの多くは突発的に起きるように見えますが、実は違います。日々の生活の中で、相手(非正義、つまり悪)へのマイナス感情を増幅させていき、それが何かのきっかけで暴発するのです。 私も、かつて毎日のように夫婦ゲンカをくり広げていました。まさしく「正義」対「正義」。妻に対して「それは君がおかしい」「俺は間違っていない」「どうして(俺の気持ちを)わかってくれないんだ」――そんなことばかり叫んでいました。妻もまた私に対して同じようなことを言い続けていました。 マザー・テレサは「愛の反対は無関心だ」と言いましたが、「愛の反対は正義だ」と言った人もいるそうです。自分にとっての「唯一絶対の正義」は、「愛」どころか、人を傷つける「刃物」なのです。夫婦ゲンカとは、「正義」という名の刃物をお互いに相手に突きつけている状態なのです。