「東京ドーム約3個分の“森”をオープン」「ソラマチでは新鮮な野菜を使った健康ランチが食べられる!」…。実は売上減少の「養命酒」が狙う“起死回生”の秘策
商品開発においても、生薬や和漢素材はあえて軸にはしなかった。そこに囚われることなく、「お客様が安心して手にとって食べていただけるもの」を徹底的に追求。化学調味料や農薬を使った野菜を可能な限り減らし、「健康に寄与する」「おいしく、食べて安心」という世界観を打ち出した。 ファン像として意識したのは、老若男女誰でも、その考えに共感してくれる人だ。「おいしくたのしい体験をしたい人、身体に気を遣った食事をとりたい人は、みんなお客様だと考えました」と福盛さんはにこやかに言う。
■拠点を増やし、森へと広がる構想 こうしてブランドの形が定まり、くらすわは着実に認知の場を広げていった。諏訪の複合施設を本店に据え、長野市にショップ、松本市には和食レストランを開設。さらに首都圏進出の足がかりとして、東京スカイツリータウン・ソラマチに、ショップとベーカリー、カフェ、レストランを備えた店舗をオープン。ECサイトも完成した。 そして2024年10月、くらすわブランドの集大成として、東京ドーム約3個分、約15万5,000平方メートルの広大な敷地に、体験型複合施設「くらすわの森」が誕生した。
くらすわの森は、豊かな森の中で、自然と「心身共にすこやかな体験」を楽しめる場所だ。もともと「養命酒健康の森」だった場所を一新し、くらすわのブランドコンセプトを体感できる空間として生まれ変わった。 ピザ窯とチーズ工房を併設したレストラン、ベーカリー、ミートデリ、ジェラート店、ショップ、BBQ施設などが集まるほか、木の香りに包まれながら読書に夢中になれるライブラリーや、遊びながら自然を学ぶデジタル音声ガイドも用意されている。
養命酒製造がこの施設に巨額の投資をした理由は、ブランドの世界観を五感で体感できる場所を作るためだ。くらすわが目指す「広げる、すこやかなくらしの輪」という価値を、より多くの人に伝えたいと考えたのだ。それと同時に、養命酒製造の新しい挑戦を、社会に強くアピールする効果も期待された。福盛さんはこう説明する。 「昨今はかねふくさんの『めんたいパーク』のように、ブランド認知のために大型のコンセプト施設を作って認知拡大を狙う企業が多いですよね。それに倣って、くらすわと弊社のチャレンジングな姿勢も、一気に広めようという戦略でした」