介護を受けることを考えるなら「どこで」「だれと」「どのように」暮らすかを想定することが鍵となる。定年退職後のライフプランの組み立て方を解説
介護をしたことのない人にとって、もし介護が必要になった場合、どのようなことをすればよいか、意外と知らないという方は多いかもしれません。特に年齢が若ければなおさらでしょう。 介護は老後のライフプラン(人生設計)のなかでも、重要なライフイベントの一つです。実際に介護が必要になってから考えるのでは遅く、いざというときにうまく対応することが難しくなる恐れがあります。 今回は、介護が必要になる過程で発生する、生活環境の変化について、一緒に考えていきましょう。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
介護は生活上での課題
図表1は、退職後のライフプランを考えるうえで、どこにポイントがあるかを示したものです。この図では、介護が必要になるライフステージを「後期高齢者(75歳)になってから」と見立てています。 介護については「医療・介護」と表現されることがありますが、75歳以降は特に、健康上の問題である「医療・介護」を軸に、ライフプランを組み立てる必要があります。
<図表1> ※筆者作成 このとき、どこでだれと生活するかが重要なポイントになります。 介護は一般的に、介護を必要とする人を世話することなどのように解釈されがちですが、本質的には、介護を必要とする本人(要介護者)が「どのような場所で」「だれに」介護されるのか、つまり、どこでだれと暮らしながら介護を受けるのかという「生活上の課題」といえます。 このようなことから、退職後のライフプランを組み立てる際は、どこで天寿を全うするかを想定したうえで、介護について対策を講じる必要があります。
介護を考える際は、生活環境の変化を想定する
それでは、要介護状態の代表的な例として、身体障害が生じた場合について見ていきましょう。例えば、脳梗塞を患い、救急車で病院に運ばれ、右腕が動かないなどの障害が残った状態でその後の生活をしていくことを想定します。 罹患後の生活環境の変化としては、次のような過程が考えられます。全ての人がこのような過程を経るわけではありませんが、一般的な流れとしてイメージしてみてください。 【(1)急性期病棟⇒(2)回復期病棟や慢性期病棟⇒(3)介護施設や自宅】 (1)病院の急性期病棟では、救急車で運ばれた後、緊急で入院・手術が行われます。 (2)その後、回復期病棟に移り、リハビリテーションを行いながら日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)の回復を目指します。回復期病棟で十分にADLが回復せず、もう少し療養が必要な場合は、慢性期病棟に移り、療養を重ねます。 (3)回復期病棟や慢性期病棟を退院し、介護施設や自宅で生活します。 病院は「治療や療養」をする場所、介護施設や自宅は「生活」をする場所、と分けて考えると分かりやすいでしょう。 つまり、治療や療養をしていた病院を退院し、その後、介護施設や自宅でだれとどのように暮らすかを考えることが、人生設計における介護のポイントであるといえます。