自動車認証不正問題であぶり出された課題
■ホンダの場合 ★騒音試験を最重量グレードと最軽量グレードで行う際、試験条件の範囲を超えた重量で測定し、実際の数値は範囲内のものに書き換えていた ★原動機=エンジンの出力試験で、すでに型式指定を取得している車種のデータに近づけるよう書き換えていた ―― 騒音試験については、同じ車種で重量の最も軽い車が加速騒音では不利とされます。遮音材が少ないなどの理由です。一方、重量の重い車はエンジンにより負荷がかかるため、定常走行では大きな音が出るとされます。そうした性質から最重量、最軽量のグレードで車種の“騒音最大値”を測定しようというのが本来の検査の趣旨です。ただ、試作段階では設計変更などで重量が当初の数値より変化することもあり、その都度、再試験が必要になります。それを避けるため、重量を当初決められた条件をさらに厳しくして測定したというものです。 エンジン出力試験については、例えば車名が違ってもエンジンは共通というものがあります。また、一部改良をしてもエンジンの仕様そのものは変わらないケースもあります。ただ、その場合でも出力値に違いが出ることもあり、再試験や解析が必要になります。それを避けるために、すでに型式指定を得ているエンジンの出力値に近づけるようデータを書き換えたというものです。
■マツダの場合 ★衝突試験のうち、乗員の保護を評価する試験でエアバッグの自然起爆ではなく、タイマーを使った起爆試験のデータを申請データとして使用した ★エンジン出力試験で点火時期補正機能の一部を停止して計測したデータを申請データとして使用した ―― 衝突試験はトヨタのケースとほぼ同様。エンジン出力試験は、実車では走行による風により、適度な吸気温度に保たれるところ、試験設備では走行風がないため吸気温度が上昇し、点火時期補正機能が働くため、試験でその機能を止めたというものです。 「認証制度の根底を揺るがすものであり、自動車メーカーとして絶対にやってはいけないこと」(トヨタ・豊田章男会長) 「認証制度に関わる様々な試験はお客様に安心安全に製品を使っていただくための大前提になるもの。この結果を大変重く受け止めている」(ホンダ・三部敏宏社長) 「不正と言わざるを得ない事案が発生したことについて、経営としての責任を重く受け止めている」(マツダ・茂籠勝弘社長) 記者会見した3社のトップは冒頭におわびし、今回の責任について認識を明らかにしました。一方、各社とも安全性、法規の基準には問題がないことを強調、会見の雰囲気自体は、よくある“不祥事会見”とは違ったものでした。