「安田猛はノーサイン、松岡弘にはいい音が出るミット」名捕手・大矢明彦氏が語ったヤクルト両エースの生かし方と“魔術師” 三原脩監督に教わったプロとしての生き方
松岡弘氏と安田猛氏…対称的な2人の同学年投手
大矢氏の現役時代、ヤクルト投手陣を支えたのは、快速球でならした右腕・松岡弘氏と抜群のコントロールが持ち味の左腕・安田猛氏、左右の両エースだった。 徳光: 当時のヤクルト投手陣はどうでしたか。松岡さんというピッチャーとの出会いは大矢さんにとっては、非常に大きかったですかね。 大矢: そうですね。僕にとって一番良かったのは年が一緒だったっていうこと。すごくなじんで、いろいろなことが言える感じがあって、僕もすごくやりやすかったっていうのはありますね。 松岡はわりと音にこだわったんですよ。パチーンっていい音で真っすぐを捕ってほしかったんですよね。 徳光: そうすると、松岡さん用のミットがあったんですか。 大矢: ありましたよ。ちょうどボールが当たるところが硬い。パチーンっていい音が出るように。 徳光: 安田さん用のミットは。 大矢: もっとペラペラです。そして、普通のミットよりも、だいたい1センチくらい小さいやつ。 安田が入ってきて、なんとかゲームで使うようにするために、三原さんから、「間を詰めろ」ってアドバイスされたんですよ。 「こいつのピッチングは一球一球、間が開いたら、相手のバッターが考えるから打たれる。間を詰めることを考えろ」って言われて、それで考えついたのがノーサインです。 徳光: ノーサインなんですか。 大矢: はい。ノーサインでやるには、シングルハンドでうまく使いこなせないとダメ。だから、安田用のミットは片手で使いこなせるやつ。 大矢氏が安田投手用に使っていた小さめのキャッチャーミットは、その使いやすさから「大矢型ミット」と呼ばれ、キャッチャーミットのスタンダードになる。 大矢: 今は誰でもその形です。いい音も出るし捕りやすい。今でも「大矢型」って言っていただいてるんですけど、操作がしやすくて、みんな、この形を使うようになったんです。 徳光: 今の12球団のキャッチャーはだいたい「大矢型ミット」。 大矢:はい。 安田氏が投げるときは、ノーサインで「間を詰めてテンポ良く」と意識していたという大矢氏。ということは当然、試合時間も… 大矢: 短いですよ。 当時、タイガースに江夏(豊)っていう左のすごいピッチャーがいたじゃないですか。江夏・安田のゲームなんかは、どっちか先に1点取ったほうが勝ちなんですよ。2時間かからないくらいで終わっちゃう。 徳光: 全然タイプが違うピッチャーなのに。 大矢: はい。 徳光: 松岡さんはどうでしたか。 大矢: 松岡は、よく言えば慎重でしたね。 徳光: ということは試合時間が長いってことですか。 大矢:はっきり言うと、そうなっちゃうんですよね。「今日の先発は松岡」ってなると、みんなクラブハウスから家に「今日はちょっと遅くなるぞ」って。 徳光: 奥さんに電話するわけですか(笑)。 (BSフジ「プロ野球レジェン堂」 24/9/3より) 【後編に続く】
プロ野球レジェン堂
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